イオンのデジタル人材育成プログラム どこでも通用するスキルを身につけるには
「自分のキャリアは自分で切り開く」カルチャー未経験からでもデジタル専門人材を目指せる
――カリキュラムの内容についてうかがいます。ジュニアクラスはその分野の業務が全くの未経験の人でも受講ができるのでしょうか。 ジュニアクラスは、すでにジュニアレベルの人向けのものではなく、受講したらジュニアレベルになれるというコース設計です。ですから、ジュニアクラスの受講生は基本的にはゼロからのスタートを想定しています。受講生の中には、普段は店舗で食材の調理をしている社員がいます。 ジュニアをクリアしたら次にミドルに進む形でステップアップしてもらうことを想定しています。ただし基本的にABSではどの講座でも、連続受講を認めていません。学んだことを実践に生かすプロセスを重視しており、受講した次年度は実務に集中して取り組んでもらうことにしています。そのため、ジュニアクラスからスタートした人がすべてのカリキュラムを終えてハイクラスの人材になるには、最短でも5年はかかる見込みです。 ――受講者はどのように決めているのでしょうか。 会社によっては指名をしているところもありますが、基本的には手挙げ式です。もともとイオングループには、「自分のキャリアは自分で切り開く」という社員の姿勢を大切にするカルチャーがあり、ABSは伝統的に立候補制です。興味のある領域についてABSで学び、得たスキルを生かして希望部署への異動をかなえる人もいます。 ただ、冒頭でお話ししたように人材ポートフォリオにおけるマッピングの中で、例えば「UI/UXデザイナーのジュニアを何人育成したい」というような、各社の人材方針があります。そのため、募集枠自体は会社ごとに決めています。会社によっては、6職種すべてを募集していないところもあります。 私個人の意見としては、少なくともジュニアレベルのスキルは、その職種に就くか就かないは別として、誰でも持っておいて損はないと思っています。例えば人事職の社員にも、デジタルスキルや知見は必要です。昨年は子会社の人事部員が、データサイエンティストの講座を受講しました。他にも経営企画や総務などのバックオフィスの部門で、数名の受講者がいます。そうした事例を各社に紹介することで、グループ全体で社員の積極的なチャレンジを後押ししてほしいと伝えています。 ――講座の実施形態や実施頻度はいかがでしょうか。 基本的にはオンラインで実施しています。リアルの場で集まる機会が全くないわけではありませんが、オンライン講座であれば時短勤務中の方など、働く時間に制約のある社員が受講しやすい。講座が終了する時間も、育児で時短勤務をしている社員が、保育園のお迎えに対応できるように設定しています。 デジタルに限らず専門人材に言えることですが、専門スキルを身につけるほど働き方が自由になります。いわゆるマミートラックに陥ることなく、キャリアを積んでいくことも実現しやすいと考えています。 ジュニアクラスでは4ヵ月間を開講期間とし、10日間の講座が設けられています。受講のチャンスを広げるために、ニーズが多いクラスは上期・下期に分けて年に2回開催。ミドルとハイのクラスは通年のカリキュラムで実施しています。 講座の最終回は、上期・下期合わせて全員で集まります。ABSでは同期のつながりを重視する文化があるので、デジタルコースに関しても「2024年 同期生」というくくりで受講生に一体感が出るような演出を工夫しています。 私にも、過去にABSを受講したときの同期がいます。入社の年次はそれぞれ全く異なるのですが、今でも気軽にコミュニケーションをとれる仲です。その中の一人はグループ会社の経営幹部になっているのですが、ABSの同期という関係性が仕事の場で役立ったこともありました。デジタル人材でも、こうした横のつながりを作っていきたいと思っています。 ――デジタルコースは、これまでに何人くらいの方が受講されたのでしょうか。 昨年は1年間で300名超が受講しました。デジタルコース自体は2015年から実施しているので、多くの卒業生が各社にいることになります。いずれ各社の主要なミーティングの場では必ずデジタルコース卒業生がいる状態になることで、よりDX推進が加速していくことを期待しています。イオングループ全体の目標としては「2025年までにデジタル人材を2000人」と定めていますので、達成に向けて取り組んでいきます。