政権が崩壊したフランスの政情不安をどう見るか、戒厳令で混乱する韓国、トランプの米国など世界各国でカオスの連鎖
戒厳令の発令で混乱する韓国を尻目に、内閣不信任案が可決されたフランスでは、バルニエ内閣が崩壊した。総選挙という賭けに出たマクロン大統領の思惑は裏目に出た格好だ。政情不安を受けてフランスの長期金利は急騰しているが、右派、中道、左派が三つ巴になったフランス政治はどうなるのか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 【著者作成グラフ】フランス国債の暴落ぶり!対ドイツ債スプレッドがあのギリシャとドイツのスプレッドを超えた 混とんとするフランスの政治情勢を受けて、金融市場でリスク回避の動きが広がっている。 ヨーロッパで最も信用力が高いドイツの10年国債流通利回りとフランスの10年国債流通利回りの格差(スプレッド)は、12月の第一週に入って0.8%ポイント台後半まで拡大し、ギリシャとドイツのスプレッドを超えた(図表1)。 【図表1 対ドイツ債スプレッドの推移】 遡ること15年ほど前、債務危機に陥ったギリシャはヨーロッパで最もハイリスクの国とみなされていた。フランス国債はドイツ国債に次ぐ安全資産と評価されて久しいだけに、フランス国債流通利回りの対ドイツスプレッドがギリシャ国債のそれを上回ったという事実には隔世の感がある。同時に、フランスの政情不安の深刻さを窺わせる。 実際、フランスの政治情勢は混迷を極めている。12月4日、次年度予算案への不満から左派勢力が提出した内閣不信任案が右派勢力の協力の下で可決され、9月に発足したばかりのミシェル・バルニエ内閣が崩壊した。バルニエ首相らは新政権が成立するまで職務執行内閣として留任する一方で、次期政権の成立に向けた筋道は立っていない。 次期政権が成立するまで、フランスの予算は暫定予算が執行される。その下では、フランス政府は最低限の歳出しか行うことができず、国民生活に多大な影響が及ぶことになる。組閣協議が遅れるほど、新年度予算の成立も遅れる。また新政権ができても、与野党間の対立が続けば、予算が成立しない状況が続く。 当然、こうした状況が収束しなければ、リスク回避志向を強めた投資家がフランス国債に売りを浴びせるため、フランスの長期金利はますます上昇する。そうなれば、まさに財政危機状態だが、現状、既にその前夜にあると言えるかもしれない。それほど、フランスの政治情勢は混とんとしており、収束の兆しが見えない。 そして、この混とんとしたフランスの政治情勢を生み出したのは、エマニュエル・マクロン大統領である。