アイデアの90%は失敗する。だから覚えておきたい「低リスクで成功を見極める戦術」2つ
お金も時間もかけずに成否がわかる
1つ目のプレトタイピングは「メカニカル・ターク」型。 「メカニカル・ターク」とは、「機械じかけのトルコ人」の意味です。これは、18世紀後半に一世を風靡した、チェスを指せるというふれこみの機械人形のことを指します。 実は、それは機械でもなんでもなく、小柄なチェスの名人が中にひそんで人形を操っていました。 プレトタイピングとしての「メカニカル・ターク」もコンセプトは同様。「対象となる技術が高価だったり、複雑だったり、未完成だったりするときで、その技術が行なうはずの機能を人間がひそかに行なう」というものです。 サヴォイア氏は、一例として架空の技術アイデア「Fold4U(フォールド・フォー・ユー)」で説明しています。 「Fold4U」とは、乾燥機で乾かした洗濯物を、自動で折り畳んでくれる機械。コインランドリー業者にレンタルすれば、事業として成功するのではないかという読みがあります。ですが、プロトタイプを作るには5万ドルの費用と6か月の期間がかかってしまいます。 そこで、「メカニカル・ターク」の出番です。 開発者のイヴァンは、近所のコインランドリーの店主に200ドルを払い、プレトタイピングを用いた実証実験への協力を得ます。イヴァンは店主から提供された、壊れた乾燥機のタンブラー部分に細工をし、後ろからアクセスできる隠し扉を設置します。 つまり、乾いた洗濯物を折り畳むのは機械ではなく、隠し扉のそばで控えているイヴァン自身なのです。利用客にはそれが見えず、中から聞こえてくるそれらしい機械音は、録音されたダミーの音です。利用者は誰ひとりとして、そんな仕掛けとなっているとは気づきませんでした。 ここで、結末のシナリオは2つに分岐します。 1つ目は、イヴァンが想定していたよりも、お金を払ってまで「Fold4U」を利用する人は、ずっと少なかったというもの。イヴァンは、がっかりしたことでしょうが、同時にほっとしていることでしょう。 なぜなら、大きな費用と日数をかけてプロトタイプをつくる代わりに、200ドルの費用と1か月足らずの期間で、「Fold4U」が、ビジネスとしては見込みがなさそうだとわかったからです。 もう1つはハッピーエンド。想定外に多くの人が「Fold4U」に料金を支払い、イヴァンはそのリサーチデータを投資家に見せて、見事投資を得るというものです。こちらの場合でも、プロトタイプをつくらずに、最小限の出費で済んでいます。