トランプ政権時代のFTC、規制緩和で小売 M&A に新たな追い風か
ディール形成の遅れはFTCだけが原因ではない
FTCがディール形成を引き締めるかどうかにかかわらず、それとは無関係のほかの要因により、消費者関連企業のM&A活動は減退している。コンサルティング会社のPwCが行った調査によると、インフレやパンデミックなどのマクロ経済的要因により、2024年上半期における世界全体の消費者関連企業に関わるディールの量は前年比で22%減少した。 消費者ブランドに特化したM&Aアドバイザリー会社であるセージグループ(Sage Group)のパートナー兼マネージングディレクターのアンドリュー・ダンスト氏は、消費者関連企業のディールに対する融資は上向いていると述べた。それでも、数年前と比べると、今後12カ月から18カ月の経済情勢を巡って依然として迷いが見られるという。 「人々はまだ経済が低迷する可能性を織り込み、検討している」とダンスト氏は語った。「景気後退の可能性が高いとはまったく思わないが、人々はまだその可能性を考慮している」。 ダンスト氏によると、一部のカテゴリーは特に苦戦しているという。同氏は、より「不況に強い」カテゴリー、つまり美容、パーソナルケア、食品および飲料、ペット用サプリメント、ベビーおよび子供用品は依然として好調だと述べた。たとえば、6月には化粧品メーカーのエスティローダーカンパニーズ(The Estée Lauder Cos.)が17億ドル(約2550億円)でスキンケアブランドのジ・オーディナリー(The Ordinary)とニオド(Niod)の親会社であるデシエム(Deciem)を買収した。大手食品会社のゼネラルミルズ(General Mills)は2023年11月、価格は非公開だが、ペット用サプリメントブランドのフェラペッツ(Fera Pets)を買収した。 FTCは通常、中小企業のディールにはそれほど影響を及ぼさない。しかしダンスト氏によると、反トラスト法の執行が緩和されれば、トリクルダウン効果により全般的にM&A活動が促進される可能性がある。ダンスト氏は、プライベートエクイティファンドは戦略的撤退を選択肢のひとつとして引き受けることが多いため、FTCが厳格化したことで、数十億ドル規模のディール以外についてもプライベートエクイティの関心が冷めた可能性があると述べた。トランプ政権下でも、2020年にCPGコングロマリットのエッジウェル(Edgewell)によるカミソリブランドのハリーズ(Harry’s)の買収を阻止するためにFTCが訴訟を起こしたことで、大型のD2C企業のディールが不安視されるようになった。FTCの問題で最終的に企業を売却することが難しくなれば、投資意欲が減退し、支払ってもよいと考える価格が下がる可能性がある。 「トランプ氏がFTCのトップに立てば、明らかに、M&Aと消費者環境に良い影響が出ると思う」とダンスト氏は語った。 [原文:What a Trump-led FTC will mean for retail M&A] Mitchell Parton(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
編集部