トランプ政権時代のFTC、規制緩和で小売 M&A に新たな追い風か
トランプ政権とバイデン政権で反トラスト法の執行はどう変わったか
バイデン政権下のFTCはトランプ政権時代より積極的だと認識されているにもかかわらず、実際には、トランプ政権の最初の3年間に司法省とFTCが合併に対して異議を申し立てた件数は、バイデン政権時代よりわずかながら多かった。デジタルメディアのクオーツ(Quartz)によると、その件数は2017年から2019年にかけては118件、2021年から2023年にかけては108件だった。 バイデン政権下のFTCは大企業に対して特に攻撃的であることで知られており、クローガーとアルバートソンズの合併、ビッグテックの一員であるマイクロソフト(Microsoft)がビデオゲームパブリッシャーのアクティビジョンブリザード(Activision Blizzard)を690億ドル(約10兆3500億円)で買収するという計画(この買収阻止には成功しなかった)、寝具メーカーのテンピュールシーリー(Tempur Sealy)がマットレス会社を40億ドル(約6000億円)で買収する提案などのディールを阻止しようとしてきた。 クリーブランド州立大学(Cleveland State University)の教授で反トラストを専門とするクリス・セイガーズ氏は、第1次トランプ政権下での反トラスト法の執行は共和党政権であることを考えればいつものことだが、反トラスト当局が反トラスト的な価値観よりも大統領の政治的目標に関連する訴訟を起こしているという印象が強かったと述べた。トランプ時代の2018年に司法省はマスメディア企業のタイムワーナー(Time Warner)と通信系持株会社のAT&Tの合併に異議を唱えたが、元司法省の弁護士らに精査され、これは政治的動機による可能性があるとされた。この件には、大統領が公然と批判していたニュースチャンネルのCNNの親会社が関わっていた。 「この異議申し立ては野心的かつ攻撃的で、民主党政権ですら提訴しなかったと思うが、大統領がたまたまCNNを嫌いだったことが動機だったのではないかという疑念は常にあった」とセイガーズ氏は語った。 トランプ氏は多くの小売企業に対して不満を表明していないため、クローガーとアルバートソンズのような規模でない限り、異議を唱えられる小売業のディールは多くはないとセイガーズ氏は予想している。「小売業では、常識的な執行に留まると予想している」。