些細なことで愛は憎しみに変わる…40代女性が告白「祖母の死をずっと願っていた」深刻なワケ
孫を所有物のように扱った祖母
「母親は家事も嫌いだったので、結局は家事も介護も私が全部やるしかなかったんです。夢も自分の自由な時間も全部、祖母に全部奪われました。そのために私を育てたのか、って気づいたときに『祖母さえいなければ』と何度思ったかわかりません。…包丁を握って祖母の枕元に立ったこともあります」 そんな陽子さんを思いとどまらせたのは、おなかに宿った新しい命だった。当時、交際中だった現在の夫との間に子どもを身ごもっていたことがわかった。 「祖母は『世間体が悪い』『堕ろせ』と大激怒していました。結婚することを伝えると、『二度とうちの敷居は跨がせない』と言っていました」 そのため陽子さんは結婚後、ほとんど自宅には寄り付かなくなったという。陽子さんが家を出てしばらくすると、祖母は遠方に住む父親の妹が引き取り、晩年は故郷の老人ホームで過ごした。 「叔母さんが介護できるならもっと早くにやってほしかったし、老人ホームに入れるならもっと早くに入れてもらいたかった。今、思い出しても悔しいです」 陽子さん一家の場合、家の結びつきをあまりにも重視するあまり、祖母は孫を所有物として扱ったことが根本的な原因だろう。 もっとも、孫たちが成長してから祖父母と同居する場合にも、また違った注意が必要だ。ある程度、物心がついてから同居した場合、祖父母と孫との間に亀裂を作ることがあるからだ。
孫に殺されないために
うまくいかない同居は、事件へと発展する恐れがあると前出の出口教授は危惧する。 「祖父母世代と孫世代での“適度な距離”が取れないことが原因です。以前のような大家族時代には、それぞれに役割分担がありました。ですが、核家族化が進んでいる昨今、家族の中の力関係が変わると、軋轢が生じやすいんです」 祖父母世代は親子ほど責任が伴わないことから、甘やかしすぎたり、反対に厳しすぎたり。孫も祖父母も、お互いに関係があいまいになってしまう。 「祖父母と孫、相手とのかかわり方がそれぞれに過度になりすぎてしまう。親は相応の責任を感じて子どもと向き合いますが、一世代離れていることにより、祖父母となるとそれが異なる場合があります。 とりわけ祖父母との関係の中では、甘やかすだけ甘やかしたり、またはその逆に厳しくしたり、また依存することもあるでしょう。そうやって祖父母たちは孫たちをコントロールしようとする。一方の孫たちも祖父母との関わりで自分の思い通りにならないことに不満を持ち、いつしかそれが殺意に変わっていく」 では、祖父母が孫に殺されないためにはどうしたらいいのだろうか。 「適度な距離間を常に持っているかの確認、点検をすることです。私たちには確証バイアスといって、自分に都合のいい情報は取り入れ、都合の悪い情報は捨て去る傾向があります。つまり、自分を見失いやすい。定期的に見直していくことがとても大切なのです」 「孫だから……」とその関係を過信するのではなく、当然だが、一人の人間として付き合う必要がある。 多様化する価値観、良くも悪くも自分中心、そして忍耐力がない――そんな孫世代と、競争意識が強く、努力は必ず報われると考える団塊世代の祖父母たちがうまくやっていくためには、「スープが冷めない距離」より、もっと長い距離をとる必要があるのかもしれない。
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