「新NISAを今すぐ解約して二度と手を出すな」という森永卓郎さんが唯一持ち続ける"例外銘柄"の種類
■10年以上、取引が行われていない口座は休眠口座に 膨大な労力を費やした末に、次々と父の口座を把握していくことができ、全部で数千万円の預金があることがわかった。 ただ、なかには苦労してつきとめた通帳に700円しか入っていないということもあった。 銀行員に「この通帳、どうなさいますか」と尋ねられた私は、咄嗟に椅子から立ち上がり、「放棄します」と言って、銀行を立ち去った。 筆舌に尽くしがたいほどの苦労をもってしても、父が持っていたすべての口座がみつかったかどうかは藪の中だ。 父の死後、業者に依頼して行った遺品整理の荷物に通帳が紛れていた可能性も否めない。 銀行は10年以上、取引が行われていない口座を休眠口座とみなす。 その総額は850億円にのぼるという。 もちろん口座の持ち主や遺族からの請求があれば払い戻しに応じるが、現実的に払い戻されるのは350億円程度で、残りの500億円は政府に納付される。 知らぬが仏とはいえ、事実上、相続税で100パーセント持っていかれるのと同じことだ。 父の遺産整理では煮え湯を飲まされた。 ただ人生に無駄はないと今になってつくづく思う。 相続地獄の経験がなければ遺産整理を甘く見ていただろう。 私の死後、家族を同じ目に遭わせるわけにはいかないという想いも生まれなかったはずだ。 私は父の遺産整理が終わるや否や、自分の預金口座、証券口座リスト作りを開始した。 リストはパソコンのハードディスクに保存していたのだが、数年前に私のパソコンのハードディスクが突然死してしまうという事件も起きた。 妻のパソコンにバックアップしてあったので事なきを得たが、今にして思えば、リスト自体が使い物にならない代物だった。 ■預金口座の一本化にかかる多大な労力と時間 がんになってから私がまず挑んだのは、預金口座の一本化だ。 リストを作成してあるからと安易に考えていたのだが、これが大変な作業だった。 口座と通帳と印鑑。ネット口座の場合は暗証番号が完璧に揃っていないと、本人でさえ金を引き出すのは極めて難しい。 どう難しいのかと言うと、数々の手続きを踏まねばならず、労力と時間がかかるのだ。 一本化を実際にやってみると、時代の変化を強く感じた。 父が亡くなった13年前と今とで一番大きく変化したのは金融機関におけるシステムだ。 わかりやすく言うと、父の時は思い立ったタイミングで銀行の店舗へ出向くと銀行員が対応してくれたが、今は完全予約制。 この予約はWEBから行う必要がある。しかも予約が取れるのが、1週間とか2週間先になることもある。 だから、手続きにとてつもない時間がかかるのだ。 予約ができて、銀行へ出向く日が決まっても安心するのはまだ早い。 私の場合、思わぬ壁に直面した。 昔は銀行で口座を開設した時に使用した印影が通帳に載っていたが、今はセキュリティ対策で、通帳自体に印影を残さなくなった。そのため、どの通帳にどの印を使ったのかわからなくなっていたのだ。ちなみに我が家には印鑑が11本もあった。