日銀・多角的レビュー④:非伝統的金融政策とは何か
非伝統的金融政策は当初期待した程の効果を挙げていない可能性
以上のような経緯で、各国に広まっていった非伝統的金融政策であるが、その効果と副作用について、十分な検討、検証が果たして各中央銀行でなされてきたかどうかについては、疑問な面がある。 短期的で緊急避難的措置として始められた非伝統的な政策が、どの国においても予想外に長期化してしまい、まさに非伝統的ではない当たり前の標準的政策になってしまった。 さらに非伝統的金融政策の効果が、果たして副作用を上回っていたのかどうか、今後も引き続き慎重な検証作業を続けていくことが重要である。筆者には、効果と副作用のバランスは、時間の経過とともに悪化していったように思われる。
非伝統的金融政策では効果と副作用の比較衡量が難しい
効果と副作用の比較衡量に基づいて金融政策を判断していくということは、まさに定石ではあるが、とりわけ、非伝統的な政策の場合には、これはかなり困難な作業となる。伝統的金融政策のように長い経験と知見が蓄積された政策手段ではないことから、その効果とともに副作用についても、より不確実性が高いためだ。 さらに、副作用については、そもそもどのような種類のものがあるのかについてさえも、未知の部分が多いと言えるだろう。また、伝統的な金融政策と比較して、中央銀行のバランスシート拡大など、その正常化に非常に長い時間を要する手段も含まれるため、副作用についても非常に長期の観点からの判断が要求され、その分不確実性が高いと言えるだろう。
非伝統的金融政策を各国がレビューをするとき
こうした中でも、各主要中央銀行が果敢に非伝統的金融政策手段を導入した際に、十分な検証がなされずに、他の中央銀行に倣って、半ば安易に実施してきた、という側面が多分にあったのではないか。この点については、今後しっかりと検証されていくべきである。 さらに、他の中央銀行が導入した政策手段を採用する場合には、当該国(地域)との経済、金融環境の差異について、事前に十分な検討がなされるべきであるが、果たしてそうであったのかについても、十分な検証が必要であろう。