ロックの名盤・カクテル・シガー…渋谷の夜を楽しむバー セルリアンタワー東急ホテル
連載《hotel TIPS》Vol.26
編集長がホテルのおいしいものや楽しみを探しに行く「hotel TIPS」。渋谷らしさを凝縮したロックバーがあると聞いて、さっそくセルリアンタワー東急ホテル(東京・渋谷)に向かいました。秘密めいた、重々しい鉄扉をゆっくり押し開けると、往年の洋楽ファンにはなじみの深い、心弾むメロディーとビートに包まれます。これこそが知る人ぞ知る、ロックとシガーを楽しめるバー「R261 シガー&ロック」なのです。 【1分動画・写真はこちら】青い炎が…カクテル作りの見どころを動画で紹介。バーテンダーは何を語る?
■懐かしのロック、名盤がそろう
席数は18だけ。内装は全面、赤に染められています。円形カウンターの向こうに掲げられているのはアンディ・ウォーホルのアート。天井に届くほど高いバックバーには、ハイエイジングのシングルモルトやコニャックなどの希少なお酒に加えてレコードが並び、スピーカーも置かれています。音楽やファッションの街といわれてきた渋谷にぴったりのクールな面構えのバーなのです。 「1960年代から80年代までのロックの名盤、200枚を集めています」とチーフバーテンダーの荻原圭祐さん。慣れた手つきでプレーヤーにかけたレコードは、ザ・ローリング・ストーンズの「Love You Live」。ウォーホルが手掛けたジャケットが、店内のアートと呼応します。「店名のRは、ルージュ(赤)、ロック、レコードのRと、また来ていただきたいという思いであるリピートのRを表しています」 渋谷のシガー&ロックバーにふさわしいものをと荻原さんが考えたシグネチャーカクテルが「ワイルド インセンス ジュレップ」です。米国ケンタッキー州で有名なカクテル、ミントジュレップをツイストしました。 ミントジュレップはバーボンウイスキー、ミント、シュガーシロップというシンプルなカクテルですが、そこにワイルドな香りを付けたというのが「ワイルド インセンス」の由来です。
■青い炎 幻想ムードを演出
カクテル作りで目を引くのが、バーボンにコーヒー豆とシナモンスティックを入れて火を付け、瞬間的に香りを移していく工程。この炎を使う技法は、フレアバーテンディングと呼ばれるものです。火を灯(とも)し、2つの銅製マグに交互に液体を移しながら仕上げていく手技はベテランバーテンダーならでは。パフォーマンスとしても見応えがあり、青い炎が赤い店内に浮かび上がる幻想的な雰囲気にも酔ってしまいそう。 こうして香りが移ったバーボンを冷やした後、たたきつぶして香りを引き立たせたフレッシュミント、クラッシュアイスとともにシェークします。最後にグラス上部にジンジャービアを注ぎ込んで完成です。 最初の一口は、ガツンとくるバーボンにコーヒーとシナモンのスパイシーな香りが溶け合い、さわやかなミントの風味とともに体に染みわたります。ストローでかき混ぜれば、今度はジンジャーが加わって味の変化が楽しめます。荻原さんの狙い通り、「シガーとともにゆっくりと味わえるスパイシーなカクテル」をひととき堪能できました。 お客様の様子をみながら音楽をセレクトし、雰囲気を創り上げていくのも楽しい、と荻原さん。ロック通のお客様から音楽について学ぶことも多いそうです。 空調の工夫により、シガーのにおいはほとんど気になりません。お気に入りのロックをリクエストしながらワイルドなカクテルを飲むほどに、渋谷の夜が更けていきます。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。