権力者・道長に翻弄され続けた敦康親王
7月28日(日)放送の『光る君へ』第29回「母として」では、愛娘・賢子(かたこ/けんし/永井花奈)を育てるまひろ(のちの紫式部/むらさきしきぶ/吉高由里子)の姿が描かれた。一方、藤原詮子(あきこ/せんし吉田羊)は死に際し、藤原伊周(これちか/三浦翔平)を復権させ、その怨念を鎮めるよう弟・藤原道長(みちなが/柄本佑)に懇願したのだった。 ■藤原伊周が宮中に舞い戻る まひろの父・藤原為時(ためとき/岸谷五朗)が越前に赴任してから4年の月日が流れた。真面目な仕事ぶりが評価される一方、宋人を帰国させるという命題が未解決のままだったため、再任官は見送られた。 ある日、まひろは夫・藤原宣孝(のぶたか/佐々木蔵之介)が死去したことを知らされる。突然の知らせは正妻の使者がもたらしたもので、すでに弔いの儀式は済ませたという。まひろは返す言葉もない。父との死別を理解できていない娘・賢子の無邪気な笑顔が、まひろを涙させた。 父の解任と夫の死去で先行きの見えなくなったまひろたちだったが、そこに救いの手を差し伸べたのが藤原道長だった。道長は為時に、官職の代わりに嫡男の指南役を依頼したのだった。ところが、為時はまひろを慮(おもんぱか)って辞退。それに対し、まひろは今後の暮らしのために依頼を受けるべき、と為時を諭す。 一方、宮中での復権を誓う藤原伊周は、在りし日の妹・定子(さだこ/ていし)との思い出を書き記した書物を清少納言(せいしょうなごん/ファーストサマーウイカ)から託される。宮中に広めてほしいと懇願された伊周は、復帰を期して秘かに道長を呪詛(じゅそ)する儀式を行なっていた。 そんななか、女院・藤原詮子が病に倒れる。自らの死を悟った詮子は、弟・道長に伊周の官位を元に戻すよう遺言する。伊周の怨念を鎮めるためだ。 こうして宮中に舞い戻った伊周は、少納言に託された書物を一条天皇(塩野瑛久)に献上する。亡き定子をいまだ思う日々を過ごす天皇は、書物を大切に胸に抱くのだった。 ■幼少から不遇続きの人生を送った敦康親王 敦康(あつやす)親王は、一条天皇の第一皇子として999(長保元)年に生まれた。母は関白を務めた藤原道隆(みちたか)の娘である藤原定子。定子は一条天皇に寵愛された皇后として知られる。 母の定子は、敦康親王が生まれて間もない1000(長保2)年に病死。母を失った幼き敦康親王の養育は、道隆の四女・御匣殿(みくしげどの)が引き継いだ。一説によれば、死を前にした定子から、子どもたちのことを託されていたのだという。しばらくは、御匣殿が敦康親王の母代わりとなった。