中国の脅威に備えよ!ユーロファイター(ドイツ空軍)とF-15(航空自衛隊)の「共闘」を接近撮!
北海道・茨城で共同訓練「ニッポン・スカイズ24」が実施
海外へと向かう旅客機が並ぶ新千歳空港の国際線ターミナル。その駐機場の前には、航空自衛隊千歳基地(北海道)の滑走路がある。轟音を立てながら、旅客機の前を空自のF-15戦闘機が離陸していく。その後を追いかけるように、見慣れぬ戦闘機が離陸していった。機体に描かれているのは黒い鉄十字――。ドイツ国籍を表すマークである。 ユーロファイター、F-15、A400M輸送機……各国から集結した戦闘機【写真】 7月22日から25日にかけ、北海道周辺空域等で、日独共同訓練「ニッポン・スカイズ24」が開催された。同訓練に参加するため、ドイツ空軍は主力戦闘機であるユーロファイターEF-2000を3機派遣。連日、F-15と「共闘」した。 実は今回、日本を訪れたのはドイツ空軍だけではない。フランス航空宇宙軍、スペイン航空宇宙軍を加えた3ヵ国の空軍は今年6月から8月中旬まで、「パシフィック・スカイズ24」と銘打った西回りで地球を一周する大遠征を実施しており、その中継地の一つとして7月19日、フランス軍が百里基地(茨城県)へ、ドイツ軍とスペイン軍が千歳基地へと降り立ったのだ。目的は「自由で開かれたインド太平洋」の実現、である。 中国による覇権主義的海洋進出が加速し、環礁に滑走路や基地を建設するなど南シナ海の実効支配を進めているのは周知の通り。これを阻止するため、アメリカは航行の自由作戦として、米海軍艦艇を南シナ海に展開して、牽制している。これにNATO諸国も呼応した形だ。 というのも、加盟国にはフランスやイギリスなどインド太平洋エリアに領土を持つ国があり、中台問題を含め、中国の動向はNATOの脅威でもあるからだ。 日本の安全保障上欠かせないのが、日米安保条約に基づく日米同盟だ。 これとは別に、日本は志を同じくする国を「同志国」として同盟国に準ずる安全保障上のパートナーを作っており、今回は同志国との「共闘」なのである。 ドイツは’22年に、日本に空軍戦闘機を初めて展開。今年1月には、ドイツ陸軍が来日し、陸自第1空挺団と一緒にヘリを使った訓練を実施した。 そして今回、日本とドイツは初めて、戦術レベルの高度な訓練を実施した。 北海道の空に共に飛び立ち、縦横に並んで飛ぶ編隊飛行訓練を実施。太平洋側や日本海側に出て、空対空の戦闘訓練も行ったのである。詳細は明らかにされていないが、敵機がいると仮定して共闘したり、お互いを敵と仮定した戦闘訓練を行ったりしたと見られる。 自衛隊はこれまで、同盟国たる米軍以外とは、ほとんど共同訓練は行ってこなかった。今回派遣されたユーロファイターは、その名の通り欧州における標準機だ。最大速度はマッハ2で、航続距離は約2900㎞。空対空、空対艦、空対地といったミッションが可能であり、巡航ミサイルの運用もできる。 有事の際に配備される可能性が高いユーロファイターと自衛隊機が共同作戦を行うためのデータを取得することも、訓練の大きな狙いだった。 共同訓練のなかでは、日本側がドイツ軍に燃料を提供するなど、後方支援も行われている。 日本と安全保障上のパートナーシップを構築する同志国は次々と増えている。 アジアの大国、インドもそうだ。 ’18年に陸自とインド陸軍による日印共同訓練「ダルマ・ガーディアン」がインド国内で開催されて以来、ほぼ毎年、両国は「共闘」しており、昨年行われた4回目の共同訓練は日本で開催。あいばの演習場(滋賀県)にある市街地戦闘訓練場において、インド陸軍から派遣された約40名の兵士らが、陸自隊員と共に各種訓練を実施した。 この時来日した第5歩兵大隊の兵士の多くが、カシミール紛争に従軍しており、陸自隊員たちにとっては、”実戦”経験を伝え聞く貴重な機会ともなった。 イギリス軍とも同志国としての絆を深めており、’21年には、空母「クイーン・エリザベス」が横須賀基地に寄港。太平洋上で、日英米加蘭などによる共同訓練を実施し、中国に揺さぶりをかけた。 日本が同志国を増やしているのは、中国による脅威がすぐ目の前まで迫っているからに他ならない。そしてその危機感を共有しているから、ドイツやイギリスも軍の精鋭を派遣するのである。 『FRIDAY』8月23日・30日合併号より
FRIDAYデジタル