【ドラマ座談会】生方美久&吉田恵里香の共通点は? 宮藤官九郎ら脚本家のいまを考える
これからに期待の脚本家は?
ーー主に5人の脚本家のお話で、昨今のドラマ事情が浮かび上がってきたと思ったのですが、ほかに取り上げたい脚本家はいますか? 田幸:『わたしの一番最悪なともだち』(2023年/NHK総合)を書いた兵藤るりさん。とても若くて、それこそ新しい感覚で、若い人のリアルな会話を書くので、これからがとても楽しみです。10月期は『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)を書かれます。 木俣:その兵藤さんと『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年/カンテレ・フジテレビ系)のチェインストーリーをダブルで書かれた市之瀬浩子さん。『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合)の脚本を何話か書いています。坂元裕二さんの大学のゼミの生徒さんだから、生粋の坂元裕二のフォロワーという感じですよね。 成馬:『量産型リコ -最後のプラモ女子の人生組み立て記-』(テレビ東京系)の企画から脚本まで手掛けている畑中翔太さんに注目しています。『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のフォーマットを使って変わった趣味を見せる“趣味ドラマ”の描き方が毎回見事で、人間ドラマと両立できている。あとはNetflixの『地面師たち』の大根仁さんの脚本がすごくよかった。 木俣:脚本協力で黒住光さん、楠野一郎さん、二宮孝平さんと精鋭が3人も入っていますよね。 成馬:原作小説と比較すると、ドラマ向けに脚色された部分が見事なんですよね。『地面師たち』はNetflixでイッキ見されることに特化した作りで、一気に最終話まで観てしまう。冒頭で話した村上春樹と村上龍の話でいうと完全に村上龍の世界で、こういう作品は今は配信に行くんだなぁと改めて思いました。 田幸:『おいハンサム!!』(2022、2023年/東海テレビ・フジテレビ系)の山口雅俊さんも企画も脚本も監督もおひとりでやっていて、センスとベテランの技術とが絶妙に噛み合っていて、すごく面白いですよね。 ーーこうして挙げていただくと、若手の兵藤さんや市之瀬さんは、今後NHKではドラマ10やスペシャルドラマを経て、朝ドラや大河へ、という流れがあるのかなという期待が膨らみますよね。 木俣:大河はかなりハードルが高い気がしますが、朝ドラ作家候補がつねに求められているような気がします。 田幸:深夜でノンジャンルのドラマをハイペースかつハイクオリティーで量産してきた職人、次の『おむすび』の根本ノンジさんも楽しみです。 成馬:生方さんの朝ドラは観てみたいですね。 木俣:生方さんがやるとしたらセンスのいい演出家とセットにしてほしいです。脚本家の話から逸れるのですが、生方さんは風間大樹さんというとてもいい画を撮る演出と組んでいるから良かったわけで。吉田恵里香さんの出世作『30歳まで童貞だったら魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)も風間さんですよね。宮藤さんの『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)は堤幸彦さんの演出も大きかった。NHKは『ちゅらさん』の大友啓史さん、『あまちゃん』(2013年度前期)の井上剛さん、『ひよっこ』(2017年度前期)の黒崎博さんなどの主力が抜けて、脚本家だけでなく次世代の演出家が求められているはずです。脚本家にとって脚本を的確に読み解いて画にできる演出家との出会いは大きいです。 田幸:「つい脚本と俳優の芝居を見てしまいますが、演出の力によるところも多いでしょうね。『光る君へ』も、大河ドラマとしては異例の女性でチーフ演出を務めた中島由貴さんや、内田ゆきチーフプロデューサーが作り上げたところもあるでしょうし。 成馬:演出でいうとTBSの塚原あゆ子さんの次回作が気になりますね。映画『ラストマイル』を経て、その次は『1ST KISS ファーストキス』で坂元裕二さんと組ますが、この『1ST KISS』のプロデューサーが『ゴジラ-1.0』の山田兼司さんなので、塚原さんが『ゴジラ』をやる未来もあるのではないかと期待しています。『アンナチュラル』(2018年/TBS系)や『MIU404』(2020年/TBS系)みたいな社会派テイストの『ゴジラ』ができたら面白そうじゃないですか。その時は是非、野木亜紀子さんに脚本を書いてほしいですね。 田幸:野木さんは次期、日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』も楽しみですが、野木さんの納得のいく題材とタイミングで、朝ドラをいつか書いてほしいですね。 (構成=木俣冬)