【ドラマ座談会】生方美久&吉田恵里香の共通点は? 宮藤官九郎ら脚本家のいまを考える
変わらないで進化し続ける大石静&岡田惠和
木俣:ウェルメイドは廃れないのだなと感じます。息が長いといえば、『光る君へ』(NHK総合)の大石静さんがすごいと思っています。2000年の朝ドラ『オードリー』と、2024年の大河ドラマ『光る君へ』の根底にある愛憎みたいなもの、特にもの狂おしいような道ならぬ恋の描き方が時代劇の世話物とか浪花節みたいな世界観が変わってない気がするんですよ。でもそれが心を揺さぶる。また、『オードリー』に「伏線回収だよ」というセリフがあったのですが、24年前といまと視聴者が好むものは変わっていないのだと笑ってしまいました。当時SNSがあったらトレンド入りしていたでしょうね。 成馬:基本メロドラマの人なのだろうけれど、宮藤さんと組んでNetflixで『離婚しようよ』(2023年)をやったりしていて、レンジが広い。 田幸:配信ドラマのように次々観てしまう中毒性みたいなものが、大石さんのエンタメにはあります。話がテンポ良く転がっていくので、続きがとても楽しみになる。 成馬:岡田惠和さんは1994年に書いた『南くんの恋人』(テレビ朝日系)を30年後のいま、男女逆転させた『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)を書いていますが、ストーリーラインが94年版のストーリーをなぞっていて、セルフリメイクになっているのが面白い。 木俣:男女逆転したうえに、現代的な感覚が入ってきていますよね。 成馬:片方が小さくなった恋人関係にいろんなものを投影できると思うんですが、南くん(八木勇征)を最終的にどういう存在として描くのかが気になります。 木俣:南くんをちよみ(飯沼愛)のイマジナリーフレンドと勘違いした人たちが、彼女に寄り添おうとそれぞれイマジナリーフレンドを持っているふりするエピソードが最高に面白かった。 田幸:岡田さんは、世知辛い現実路線を描くか、ファンタジーで忘れさせてくれるか、その2つの路線を行ったり来たりしてきた作家だと思っているのですが、いま世知辛い現実路線がだいぶ侵食してきている気がしました。でも、『南くんが恋人!?』は久しぶりにファンタジーが来たなと思います。でも、ずっと死の影がつきまとうのも岡田さんらしい。 成馬:再放送中の『ちゅらさん』(2001年度前期)もファンタジーですよね。『虎に翼』とセットで観ていると、時代ってここまで変わるのかと思います。東京に行くために福引で旅行券を当てる場面を久しぶりに観たら凄くて、ファンタジーに徹すると、ここまで面白くなるんだと思いました。ああいう面白さは今のドラマからは失われつつあるものですよね。『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)でも宝くじに当選する場面があるのですが、宝くじが出たら当たるのが岡田さんのドラマなんだなって、改めて思いました。 木俣:チェーホフの銃のような、銃が物語のなかに出たら発射されないといけないみたいな(笑)。