チームに息衝いていた「トーナメントの勝負強さ」。G大阪ユースは高川学園の奮闘に苦しみながらも粘り強く勝ち切って3年ぶりのプレミア復帰に王手!
[12.6 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 G大阪ユース 2-1 高川学園高 Balcom BMW広島総合グランド] 【写真】「えげつない爆美女」「初めて見た」「美人にも程がある」元日本代表GKの妻がピッチ登場 思い通りの試合展開には持ち込めなかった。先制しても追い付かれ、さらにピンチを迎える場面もあった。そんな流れだからこそ、貫くのは今まで積み上げてきた“自分たちの色”。青黒の若き戦士たちには、一発勝負を勝ち抜いてきた確かな自信が息衝いていた。 「みんな各々プレーは良くなかったですけど、ここまで積み上げてきたスタイルがありますし、メンタリティ的な部分では、クラブユース(選手権)を2連覇しているからこそ、チーム全体に落ち着きはあったんじゃないかなと思います」(ガンバ大阪ユース・森田将光) 苦しいゲームをチームの総力で制して、プレミア復帰に王手。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025参入を懸けたプレーオフが6日に開幕し、1回戦が行われた。Dブロックのガンバ大阪ユース(関西1、大阪)と高川学園高(中国2、山口)が激突した一戦は、G大阪ユースが粘る高川学園を2-1で振り切って、横浜F・マリノスユース(関東2、神奈川)との2回戦(8日)へと勝ち上がった。 先にチャンスを掴んだのはG大阪ユース。前半8分。MF大倉慎平(3年)のフィードにMF森田将光(3年)が抜け出し、枠へ収めたシュートは高川学園GK高城柊哉(2年)の正面を突くも、シンプルなアタックから決定的なシーンを創出する。だが、キャプテンのDF古河幹太(3年)が「今日は全体を通して硬かったかなと思います」と振り返ったように、以降はなかなか攻撃のテンポを生み出せない。 逆に高川学園は最前線のFW大森風牙(2年)のプレスをスイッチに、球際にも果敢にチャレンジ。「怖じずにやり続けることが相手からしたらやっぱり嫌なんじゃないかというところで、果敢にどんどん懐に入り込んでいく守備をやり続けることによって、相手のリズムも半減していくでしょうし、そこの部分はある程度できたんじゃないかなと思います」とは江本孝監督。少しずつ守備からゲームリズムを引き寄せていく。 25分にはMF松木汰駈斗(3年)の右クロスに、大森がフリーで合わせたヘディングはヒットしなかったものの、シンプルなサイドアタックから好機。28分にも宮城、大森、FW桑原崚成(3年)と細かくボールを繋ぎ、松木のミドルはG大阪ユースGK荒木琉偉(2年)にキャッチされたものの、高川学園が続けて際どいシーンを作り出す。 それでもワンチャンスをモノにしたのは関西王者。32分。インサイドに潜ったDF加地莉比斗(3年)が丁寧なスルーパスを通すと、抜け出したFW安藤陸登(3年)はGKとの1対1も「左足でファーに流し込むイメージで」ゴール右スミへボールを流し込む。難しい流れの中で光った個の力。G大阪ユースが1点のリードを奪って、最初の45分間は終了した。 「守備はずっとしていましたけど、良い流れは掴めていたのかなと思います」と江本監督も話した高川学園は、後半4分にビッグチャンス。右サイドから松木がグラウンダーで入れたクロスに大森と桑原がスプリント。ここはG大阪ユースのDF横井佑弥(1年)に間一髪でクリアされるも、直後のセットプレーが歓喜を連れてくる。 左サイドのCK。ショートで蹴り出した松木が、FW田坂大知(3年)のリターンを受けて丁寧なクロスを入れると、中央で待っていたDF吉岡翼(3年)が頭で合わせたボールは左スミのゴールネットへ吸い込まれる。「普段からああいうサッカーをやられているので、クロスの質は高かったですよね」とG大阪ユースを率いる町中大輔監督も認めるアタックから同点弾。沸騰するオレンジの応援席。1-1。スコアは振り出しに引き戻された。 25分。高川学園に決定機が到来する。試合を通じて正確なキックで攻撃の起点を作り続けたGKの高城が、ここも相手陣内へ好フィードを蹴り込むと、DF行友祐翔(3年)が背後へ飛び出し、GKと1対1に。ただ、ここは10月にトップチームとプロ仮契約を結んだ荒木がビッグセーブで応酬。2点目は許さない。 28分。今度はG大阪ユースに決定機が訪れる。この日も積極的にボールを引き出していた加地が、左サイドからディフェンスラインの裏に完璧なパスをグサリ。飛び出した安藤は「キーパーがちょっと前に出てきていたので、シュートのタイミングをずらして」ループシュートを選択。フワリと浮かせたボールが、鮮やかにゴールネットを揺らす。背番号9のドッピエッタ。2-1。G大阪ユースが一歩前に出る。 「そこまではどっちに転んでもおかしくないような流れになっていたので、1-2になった時にはちょっとガックリ来た部分もあったと思います」と江本監督も言及した高川学園は、それでも諦めない。34分。中央をMF西岡剛志(3年)がドリブルで運び、田坂の左クロスを松木が頭で折り返すと、ここも行友が至近距離からシュートを放つも、軌道はわずかにクロスバーの上へ消えていく。 「苦しかったです。相手は凄くタフで強かったです。球際もそうですし、ロングボールを駆使したゴールに直結するようなサッカーで、ピンチもいっぱいありましたし、もう必死でした」(町中監督)。高川学園の奮闘、一歩及ばず。1点差を守り切ったG大阪ユースが粘り強く白星をもぎ取り、3年ぶりのプレミア復帰に王手を懸ける結果となった。 「今日は『よう勝ったな』という感じでした」という森田の言葉は、G大阪ユースの選手たちの言葉を過不足なく代弁しているように思う。「もう負けたら終わりやし、1年の集大成というか、リーグ戦で優勝しても、ここで上がれなかったらという凄いプレッシャーの中で選手もやっていたと思います」とは町中監督。とにかく苦しい90分間だったことは間違いない。 一方で苦戦したことは認めながらも、ピッチの中の選手たちはいたって落ち着いていたようだ。「プリンスでもこういう難しい試合を自分たちはモノにしてきていたので、自信はありましたし、同点になってもそこから勝ち越しゴールが獲れるというのはこのチームで積み重ねてきたことなので、みんなで焦らずにできたかなと思います」(古河)「ミーティングでも『1点獲られても落ち着いていけば大丈夫だから』というマチさん(町中監督)の話もありましたし、得点は獲れると信じていたので、追い付かれても全然自信を持ってやれました」(森田) G大阪ユースは昨年に続き、今年も夏のクラブユース選手権を制して連覇を達成。シビアな『負ければ終わり』という戦いの経験値は、確実にグループの中に積み上がる。「今日もたぶん緊張はしていたんですけど、クラブユースもこういう緊張感の中で戦ってきたので、そこで2連覇しているということもあって、僕自身は結構冷静でした」と話すのはチームのムードメーカーでもある森田。やはりトーナメントでの勝負強さは際立っている。 次の相手は横浜F・マリノスユース。年代別代表経験者をズラリと揃えるような難敵だが、もうここまで来たらやるしかない。キャプテンの古河は最後の1試合に向けて、力強い意気込みを口にする。 「絶対にプレミアに戻りたいですね。それが自分たちにとってはプレッシャーにもなっていますけど、このチームは全員がそこを楽しめるような選手たちばかりですし、みんなこういう大舞台が好きな選手ばかりなので、次はもっと自分たちらしさを出していきたいなと。もう最後なので、全員で楽しんで、自分たちがやることをやって、試合を楽しめたら自然と勝てると思います」。 森田が紡いだ言葉にも、自然と力が入る。「僕自身はジュニアユースからガンバに入ったんですけど、そのままユースにも上げてもらったので、ここまで成長させてくれたクラブに大きな感謝の気持ちを持っていますし、チームをプレミアに上げて、後輩たちに置き土産を残して、良い形で終わりたいですね」。 自分たちらしく、ガンバらしく、大舞台を楽しみながら、結果を手繰り寄せてみせる。3年ぶりに約束のステージへと帰るための最終関門。立ちはだかるトリコロールを乗り越えた先にはきっと、求め続けてきた景色が広がっているはずだ。 (取材・文 土屋雅史)