イチロー氏「データでがんじがらめにされて感性が消えていくのが現代の野球」母校・愛工大名電に電撃訪問で“イチ流”指導
イチロー氏「想像以上にレベルが低い」
イチロー:みんな迷った時、どうやって判断してる?外野フライが上がりました。一塁にランナーがいて、左中間にフライが飛びました。どういう状態で判断してる?中間くらいまでいくよね。で、捕るのか捕らないのか、どう判断する。(跳ねながら打球を確認する動作を見せる)こういう感じじゃない?左右にバランスを取ってる感じ。野球やってると直感でおそらく捕るだろう、おそらく抜けるだろうって考えちゃうよね。(おでこを指差し)まずここに一つの答え、出ちゃってるよね、自分の中の。でも念のためにこうしてる。それ、判断違った時どう?反対に動くでしょ。捕るはずだったのが抜けた場合。戻りかけるよね。で、抜けてスタートでしょ。その反対も。抜けると思ったものが、捕ったら戻るよね、遅くなるよね。この動きが実は判断を迷わす動きなのね。打球判断する上で、僕が取ってる形。 といい、動いてみせるイチローさん。「下に」と言って、股関節を割り、腰を落とし、両足で土を掴むようなイメージで、どっしりと構える。 イチロー:これなら動いていなくて、見て判断を確実にできるし、一番早い。動けば動くほど、そこにスキが生まれるの。めっちゃ格下相手だったら、挑発に乗ってミスしたり、あるでしょう。でも、そうじゃない相手、レベルが高い相手だったらスキ見せちゃダメよ。挑発するのはいいけど。ある程度距離取って、じっとしててよ。動いたら全て、そこにスキが生まれるので。そういう野球をしてください。それ、データに出ないでしょ。お願いしますよ。走塁ミスは致命的になるからね。流れも変わるし。打てない、エラーするのは、高校野球だったらしょうがないよ。だけど走塁ミスは、防げる。判断する時は、基本止まって。このデータはある?愛工大名電のデータ上に出てる? 部員:出てないです。 イチロー:出てないでしょう。これだけの施設があるのに、判断難しいでしょ。こうしてください。迷ったら下です。上じゃない、リラックスじゃない。上半身はリラックス。下半身はしっかり掴んで、できれば股関節を割って。そうすると一歩目が大きくなる。割れないと、一歩目が全然違う、この幅が。力の出し方が全然違う。股関節すごい大事です。ランニングもそう。(僕の)一歩が大きい理由は股関節。それ、モノにしてください。 リードの仕方、打球判断、いずれも大事なのは下半身、そして股関節。身振り手振りで実際にお手本を見せながら、細やかな指導を続けるイチローさん。さらに走塁でデータには表せない指導を行った。 イチロー:(ランナー三塁で)内野手、前進守備でゴロ。セーフのタイミング、それで1点は取りたい。(チームの)ルールとしては、ライナーはどうしてる?ライナーバックですか?監督。(監督うなずく)アウト~!!そんなこと同時にできないから。ダメですそんなの。そんなこと両立させようとしてんの、マジで。3年生はどう?ライナーの場合、どうしてる? 部員:ライナーの場合は一応、戻る。 イチロー:アウト~~!!無理。両立しないから。それはもうしょうがないよ。ライナーも、もう行かなきゃ。じゃないとそんないいスタートを切れないよ。前進守備なんだから。これ、データ出てるんじゃないの。 部員:ないです。 イチロー:何もないよねデータ。監督、大丈夫ですか名電。 倉野監督:守り、走塁データ、ゼロなんで(笑) イチロー:監督!笑い事じゃないです。走塁めちゃくちゃ大事なのよ。内野手の強いライナーは、帰塁だったらちゃんと走れないでしょ。それはしょうがないよ、だからギャンブルなの。何もギャンブルしてないじゃない、ライナーで戻れる、ゴロは(ホームに)かえる。走塁は結構時間かかるんで、今日はここまでにします。 倉野監督:(イチローさんには)何回もきてもらわにゃあかんね。 イチロー:大丈夫ですか、監督。 倉野監督:もうコーチで専属でずっと来てもらわないと。 イチロー:これはビビるくらいのレベルの低さですよ、大丈夫ですか。走塁にあまり重きを置いてないですね。そうなりますね。 倉野監督:細かなこと、そこまではね・・・ イチロー:そうですか。 練習の合間にイチローは改めて母校の深刻な状況を口にした。 イチロー:いやー、想像以上にレベルが低い。少なくとも走塁に関しては何にもないもんね。だって何も答えられないもん。意思表示みたいなのもないし。初日は緊張感で、しかも今回サプライズだから、それはあるかもだけどね。 その後のキャッチボールでは、どんどんと距離を伸ばしていくイチローに選手たちは釘 付け「軽く投げているように見えるけど、走塁と一緒で、股関節と肩甲骨、それだけなんだけど、手で投げていくとまっすぐ行く球にならない股関節で溜める、肘はターゲット方向、投げ終わりの姿勢も大事」とアドバイス。最後の打撃練習は、風が吹きボールの飛距離が出にくい状況の中「1本出るまでやめない」という信念の元、最後にホームランを放ったイチローさん。大きな拍手に包まれ、指導を終えた。