イチロー氏「データでがんじがらめにされて感性が消えていくのが現代の野球」母校・愛工大名電に電撃訪問で“イチ流”指導
“イチ流”の走塁指導「走塁ミスは致命的になるからね。流れも変わる」
ウォーミングアップが始まり、選手たちは声を合わせてランニング。イチローさんは一人離れてストレッチから行い、選手たちのアップの様子を見つつ、一塁から三塁にかけてライン沿いを走るアップを行った。 イチロー:OK。僕今ここ走ってたでしょ。今、僕の動き見えた?どう思った? 部員:一歩目が大きな動作だった? イチロー:それはいいポイントです。一歩のストライドが大きいのは僕の走りの特徴で。それは何でだと思う? 部員:分からないです。 イチロー:おお、素直でかわいいな。足を使ってるんじゃないんだよな。みんな足の回転でっていうイメージあるよね、当然走るわけだから。僕の走りはそういうイメージがない。ひざを高く上げるとか、もも上げの状態とかよくあるよね。みんなもやるよね。僕はそれをしないです、そもそも。股関節の意識。みんな上手いっていうかレベル高いから、それあるんじゃないかな。股関節を使っていろんな動きを組み立てる。そういう意識、みんなある? 部員たち:(うなずく) イチロー:じゃあ実際、股関節を動かすことができる?股関節を割ることできる?意識はあるけど実際に動きとしてはなかなか難しい?知識としてはあるけど。 部員たち:(うなずく) イチロー:それを僕、やってます。一歩が大きいというのは、足をただ踏み出すだけではなくて、股関節から(足を)引っ張ってきてる。引っ張って来て最後、ひざから下を振り上げる。 イチローさんは、実際に足を動かしながら、視覚で部員たちが分かるように説明する。 イチロー:この繰り返し。さらに上半身は力を抜いて肩甲骨で(腕を)振る。後ろへ振る。そうすると前に来る。こういう感じで振ってると、柔らかい動きになる。全体がリラックスしてるわけじゃなくて、上半身(がリラックスしてる)。走る時も投げる時も打つ時も、何する時もそう。上半身はリラックスして、下半身はしっかり地面を掴む。今の走りはそれをミックスしたやつ。だから一歩が大きく見える。跳んでるわけじゃない。跳んでしまうと目線がブレるから。そういう走りは好ましくない、目は動きたくない。そんなことを意識して。後ろで手を振るのは、難しいと思う。股関節を引っ張るとかイメージはできると思うので。一度、全力でなくていいので、イメージして走ってみて。もう一本、軽く走ってみるので、今言ったことを頭に入れて見ておいて、動きを。 部員たち:よし! イチロー:あ、今「よし」って言うんだ。これ、伝統だね、一個見つかったね。「よし」っていつからですか。今の監督になってからですか? 倉野光生監督:そうですね。 “イチ流”の走塁授業は、まだまだ続く。今度は一塁ベース付近に選手たちが集まった。 イチロー:じゃあ、第1リードから第2リードまで一回見せて。 部員:はい。 選手が出てきて、イチローさんを前にリードする。第1リードは足をクロスしながら、第2リードはシャフルと呼ばれる跳ねながらの横移動を見せた。 イチロー:みんな、この形?チームで決まってるの? 部員たち:(うなずく) イチロー:第1リードをこうやって(足をクロスさせてすり足のように)とる理由は? 部員:ベルトをベースに向けるイメージで。ピッチャーが投げた時に戻りやすいようにする。 実際に選手がやった動きをなぞるようなリードをした後、イチローさんは「アウトォ!!」と絶叫。 イチロー:アウト!何してんの。もうバラバラやね。大丈夫?キャプテン。僕は必ず(ベルトは)ピッチャーに向けたまま、第1リードは、足をクロスには絶対にしない。打球判断のことを考えれば、必ず止まること。これが野球の中で最も難しいと言われる打球判断が簡単になる方法。28年プロでやったけど、色々迷ってこれに行きついた。高校時代に知ってたら良かったのになって思う。すごく早く知りたかったことだけど、誰もやってなかったし、だから今みんなに伝えてるんだけど。一度試してみて。打球判断で迷うこと多いんで。