サモア撃破の裏にW杯初トライ姫野和樹のジャッカル
ラストワンプレーはサモア代表のゴール前、敵ボールのスクラムからだった。 日本代表のフォワードは、前後左右のつながりを意識し、芝を踏み締め、フォワードの平均体重で「4.875キロ」も上回るサモア代表と組み合った。小さな塊となって、体重差に左右されずに押し込む。サモア代表の反則を誘い、攻撃権を得た。 「自信があった」とは、途中出場したロックのヘル ウヴェ。まだまだノーサイドの笛が鳴らないなか、日本代表は複数の選択肢から自然な流れでスクラムを選んだ。またも8人で小さく固まる。ヒット。じり、じりと前に出て、相手の上体を起こす。再度、サモア代表のペナルティを誘った。歓声を呼んだ。 場内のデジタル時計は、ロスタイム83分を記録していた。観客席からの「ニッポン」コールを背に、日本代表はさらにスクラムを選び、またも押した。 相手より体重が軽くでもスクラムを押せたのは、長谷川慎スクラムコーチの教え通りに「スパイクの64本(前方4つ×両足×8人)のポイントを芝にかける」という組み方を徹底できたから。姫野和樹をはじめとした日本代表陣営は、組む前から自信を持っていた。 前列の選手が後ろへ転がしたボールは、やがてスクラム最後尾の姫野の手元へ渡る。姫野は身長187センチ、体重108キロの25歳で、突進力を持ち味とする。この時も周りの指示を受け、楕円球を拾い上げて直進。迫りくるタックラーに衝突する。「まずはボール確保」。力強い相手に倒されながらも、何とか地面に球を置く。日本代表の攻撃は続く。 最後は、試合中にウイングからフルバックへ回っていた松島幸太朗が、左側でインゴールを割る。トライ! スタンドオフの田村優が直後のコンバージョンゴールも成功させた。 38―19。 日本代表は5日、豊田スタジアムで行われた予選プールAの第3戦となるサモア代表との86分にも及ぶ激闘を終わらせた。3連勝。そして4トライ奪取によるボーナスポイントも獲得した。予選プールAでの勝ち点を5チーム中1位の14とし、13日のスコットランド代表との第4戦を残すのみとなった。初の決勝トーナメント進出へ大きく前進した。