サモア撃破の裏にW杯初トライ姫野和樹のジャッカル
元明大主将でトヨタ自動車入社2年目の古川満は、活動自粛を強いられながらも姫野たちの決意に心を揺らした。 代表候補組から「日本代表で頑張ることがトヨタファンの皆さんに対してできることだ」というメッセージを伝えられた。「彼ら(代表選手)は彼らで集中しなくてはいけない時期」だった。自分たちは自分たちで、サモア代表戦の会場となる豊田スタジアムなどの清掃活動を実施した。2020年からの国内トップリーグには出られるようになったなか、姫野ら同僚のW杯登録メンバーにメッセージを送るのだった。互いの思いを通わせる。 かねて「ずっとラグビーに集中していました」と表面的には所属先の事柄と距離を取っていた姫野だが、おひざ元の試合では結果的に前向きなメッセージをプレーで伝えた。 13日には神奈川・横浜国際総合競技場でスコットランド代表に挑む。スコットランド代表は欧州6強の一角。侮れない相手だ。何よりスコットランド代表は9日のロシア代表戦で勝ち点5を取ればトータルで勝ち点を10まで積み上げられる。かたやアイルランド代表は12日のサモア代表戦を残して勝ち点11。最大16まで伸ばすチャンスがある。 日本代表がベスト8進出を果たすには、勝利または引き分け、たとえ敗れてもボーナスポイントの獲得が条件になってくる。もしスコットランドに4トライ以上を取られて負けると勝ち点で並ぶが、直接対決で負けることになりプールA3位で予選プール敗退となる。 「自分たちのラグビーをやって勝ちます。いい流れを保って決勝トーナメントに行けるように。3試合目でかなり疲労もありますけど、W杯でプレーできる幸せが気持ちを高めています」 姫野は、そう決意を語った。 恩師、先輩、仲間の思いを背に、この先もプレッシャーを楽しんでいくつもりだ。 (文責・向風見也/スポーツライター)