加工用キャベツの芯など堆肥化 循環型農業アピールで販路開拓
福岡県のJAむなかたキャベツ加工部会は、堆肥を製造・販売する同県福津市の大和通商と連携し、循環型農業を実現している。業者がキャベツをカット加工する際に発生する外葉や芯を原料に、堆肥を製造。その堆肥を部会員が活用し、化学肥料の使用量を減らす。加工野菜のパッケージでも循環型農業をPRして、ブランド力向上につなげる。 部会が加工用キャベツを出荷する12月から翌年6月にかけて、大和通商にはカット野菜の加工業者・セビア(同県北九州市)から連日約1トンの加工キャベツの残さが運び込まれる。もみ殻と合わせて1週間ほどで堆肥に加工し、年間約50トンを部会員に供給。鶏ふん堆肥などと合わせて畑に散布し、化学肥料の使用量を減らす。堆肥購入には行政の補助金も使えるため、肥料費も抑えられる。 堆肥化は、キャベツ部会の部会員が加工用の栽培試験を始めた2019年から行っている。 当時はカット野菜の需要が少なく、出荷期間中に販売が終わらなかったことから、大和通商に引き取りを依頼。量が多かったこともあり、大和通商が取引のあったセビアを紹介したことで、販路開拓につながった。それ以降、加工用キャベツはカット野菜の原料としてセビアなどに販売し、大和通商が加工残さを堆肥化するようになった。 製造した堆肥は部会員全員が活用している。資源循環を実践していることを消費者に伝えることで、ブランド化にも役立てている。23年産ではセビアが製造し、コンビニエンスストアのファミリーマートで販売するカット野菜のパッケージに、循環型農業を表す独自のマークとJA名を入れてPRした。 販路の確立を背景に、部会は規模を拡大してきた。設立から5年で、部会員数は当初の約3倍の13人、作付面積は約9倍の22ヘクタールとなった。出荷量や販売額も右肩上がりに増えている。価格の安定に加え、カット野菜の需要が増えたことや、鉄製コンテナによる出荷で作業効率化に加え、資材費も削減できたことも要因の一つだ。 同部会の清水陽介部会長は「しっかりと資源の循環ができており、関係者全員にとってメリットがある取り組みだ。消費者にもそれをPRできている」と評価。将来的な展望として、堆肥を使う割合の一層の増加などを描く。
日本農業新聞