ストレスに弱い人は心臓病になりやすい!?【40代・50代、心不全パンデミックに要注意!⑦】
さまざまな病気の原因としてよく取り上げられるストレスだが、実は心臓病とも無関係ではない。多くの研究で、特定の性格の人が心臓病を発症しやすいこともわかっている。今回は、心臓のスペシャリストである循環器内科医の大島一太さんに、ストレスと心臓病の関係についてお話を伺った。
性格と心臓力は密接に関係していた!
「心臓病のリスクとして見逃せないのがストレスです。 強いストレスを感じると、自律神経の交感神経が活性化し、カテコラミンというホルモンが分泌されます。これにより血圧が上がり、心拍数が増加し、心臓の収縮力が強まります。この状態が続くと、心臓には大きな負担がかかることになります。 また、1959年、アメリカの医師フリードマン氏とローゼンマン氏は、狭心症や心筋梗塞の患者さんに共通する行動パターンがあることを発見しました。性格をAからDの4つのタイプに分類したところ、タイプAの性格が心臓病、特に狭心症や心筋梗塞を最も発症しやすいことがわかったのです」(大島先生) ●タイプA/仕事熱心、頑張り屋、負けず嫌い、時間的な切迫感があり、常にイライラしている ●タイプB/何事にも動じず、落ち着いていて、マイペースでのんびりしている ●タイプC/感情を表に出さず、抑え込む性格 ●タイプD/ネガティブでクヨクヨしがち、対人関係に不安を感じる、寡黙
最近の研究では、タイプDの人も狭心症や心筋梗塞を発症しやすいことが報告されている。 「しかし、実際に多くの心筋梗塞の患者さんを診てきた経験から、性格だけが原因とは言い切れません。心筋梗塞を発症した患者さんに何か心当たりがあるか尋ねると、『仕事で強いストレスが続いていた』とか『忙しさと睡眠不足でストレスがたまっていた』といった声が多く聞かれます。こうしたことから、強いストレスも大きな影響を与えていることがわかります」
ストレスが多い人は50~80%で病気になる!?
こんな研究もある。1967年、社会学者のトーマス・ホームズ氏と内科医のリチャード・レイ氏が、さまざまなライフイベントと精神的ストレスの強さを点数化した。 □ 配偶者の死………………… 100 □ 離婚……………………………73 □ 夫婦別居………………………65 □ 拘留……………………………63 □ 近親者の死……………………63 □ ケガや病気……………………53 □ 結婚……………………………50 □ 解雇・失業……………………47 □ 離婚調停………………………45 □ 退職……………………………45 □ 家族の病気……………………44 □ 妊娠……………………………40 □ 性的困難………………………39 □ 家族の増加……………………39 □ 仕事上の変化・転職…………39 □ 経済上の変化…………………38 □ 親友の死………………………37 □ 転職……………………………36 □ 配偶者とのけんかの増加……35 □ 借金……………………………31 □ 経済的破綻……………………30 □ 仕事上の責任の変化…………29 □ 子どもの独立…………………29 □ 親戚とのトラブル……………29 □ 個人的な成功…………………28 □ 配偶者の就職・失業…………26 □ 就学・卒業……………………26 □ 生活環境の変化………………25 □ 習慣の変化……………………24 □ 上司とのトラブル……………23 □ 就労時間などの変化…………20 □ 住所変更………………………20 □ 転校……………………………20 □ 娯楽の変化……………………19 □ 教会活動の変化………………19 □ 社会活動の変化………………18 □ 小口の借金……………………17 □ 睡眠習慣の変化………………16 □ 家族の集まりの回数の変化…15 □ 食習慣の変化…………………15 □ 休暇……………………………13 □ クリスマス……………………12 □ わずかな違法行為……………11 その結果、配偶者の死が最も大きなストレス、次いで離婚、別居や近親者の死などが続いている。必ずしもネガティブな出来事だけでなく、結婚などポジティブな出来事もストレスの原因となることがわかった。 「この研究によると、過去1年間に起こった出来事の合計が200~299点の人は50%、300点以上は80%の確率で何らかの病気になると報告されています。精神的なストレスが体に大きな影響を与えるのです。 心不全の患者さんでは、抑うつ症状などの心の問題が多く見られることもわかっています。さらに、心筋梗塞や心不全といった心臓病を発症したあとにうつ病を併発すると、生存率は低下し、予後が悪化します。 抑うつ症状と心筋梗塞との関係を調べた研究では、抑うつ症状があると心筋梗塞のリスクは、東洋人(中国人)で2.08倍、ヨーロッパ人で1.37倍高くなるという結果が出ています。この結果から、東洋人は抑うつに対して、より注意が必要だと言えます。 Rosengren A,et al. Association of psychosocial risk factors with risk of acute myocardial infarction in 11119 cases and 13648 controls from 52 countries (the INTERHEART study): case-control study:Lancet 364:953-962,2004 また、1994年のロサンゼルス地震では心臓突然死が増加し、1995年の阪神・淡路大震災では心筋梗塞が夜間や早朝に増加しました。2004年の新潟県中越地震では、ストレスによる心筋症が急増しました。 さらに、アメリカの同時多発テロのあとには、突然死の原因となる重症不整脈の発症が急増したことも報告されています」 1.Kario K,et al. Increased coronary heart disease mortality after the Hanshin-Awaji earthquake among the older community on Awaji Island. Tsuna Medical Association. J Am Geriatr Soc 1997; 45: 610–613. 2.Leor J,et al. Sudden cardiac death triggered by an earthquake. N Engl J Med 1996; 334: 413–419. 3.Kario K,et al. After a major earthquake, stroke death occurs more frequently than coronary heart disease death in very old subjects. J Am Geriatr Soc1998; 46: 537–538. 4.Watanabe H, et al. Impact of earthquakes on Takotsubo cardiomyopathy. JAMA2005; 294: 305–307.