性暴力事件で医大生に無罪判決、「部屋に入ったら同意?」SNSで紛糾…裁判所はどう判断したのか
●3)「卑わいな発言という範疇」とは?
また、判決の「卑わいな発言という範疇のものと評価可能」という表現にも批判が集まっている。 これはどのような行為に対する裁判所の評価だったのか。 判決要旨によると、それは脅迫(3)と口腔性交(2)(表を参照)について検討する中で、使われた表現だ。 証拠とされた動画の中で、口腔性交の最中に「苦しい」と言った女性に対し、男子大学生が「が、いいってなるまでしろよお前」と発言したという。 これについて、判決では男子大学生2人と女性の間で、かわるがわる口腔性交が行われていた中での発言だとした上で、「いわゆる性行為の際に見られることもある卑わいな発言という範疇のものと評価可能である」とした。 また、「この発言の前後のやりとりの中に緊迫感やこれに類するものがない」ことを踏まえ、「既に行われている性行為の中でその一環としてなされた言動であって、女性の反抗を抑圧して性交等を行うための手段になっているものではない」として、強制性交罪における脅迫とは認めなかった。
●同じ事実に基づく別の解釈もありうる
以上のように、大阪高裁の判断は当時の状況やその前後の流れを踏まえてなされたものであるため、文脈を抜きにして判決の良し悪しを評価することは非常に難しい。 同じ事実に基づいて別の解釈(例:男子学生の発言を脅迫とみなす、など)が導き出される可能性もあるといえそうだ。 その意味で、国民が事実に基づいて判決の内容や裁判所の判断を疑問視したり批判したりする活動は、刑事司法に関わる裁判官や検察官に適切な緊張感を与えることにつながる。