性暴力事件で医大生に無罪判決、「部屋に入ったら同意?」SNSで紛糾…裁判所はどう判断したのか
大阪高裁の無罪判決が波紋を呼んでいる。 滋賀医科大学の学生2人が知人女性への強制性交罪に問われた裁判の控訴審で、大阪高裁は12月18日、実刑とした1審の大津地裁判決を破棄して無罪を言い渡した。 【画像】ド派手な通勤服で「ぶつかりおじさん被害ゼロ」になった女性 これに対してネット上では、「相手の部屋に入っただけで同意があるとみなされる」「嫌だと言っても無罪になる」などと怒りや不安の書き込みが相次いでいる。ただ、中には誤解も多い。 そこで今回の逆転無罪について、判決要旨の内容を踏まえ、X(旧ツイッター)で広がった投稿の真偽を検証する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●1)「部屋に入ったら同意があるとみなされる」?
最初に目についたのは、今回の判決が「相手の部屋に入ったら性的行為に同意があるとみなされる」ことを認めたと主張する書き込みだ。 しかし、判決要旨にそうした記述はない。 今回の無罪判決は、暴行・脅迫や同意の有無、その影響下での性的行為について、当時の状況を詳細に検討した上で、「(被害者とされる女性が)同意の上で性交等に及んだ疑いを払拭できない」と結論づけている。 つまり、大阪高裁が「女性に同意があった」と認定しているわけではないことに注意が必要だ。 言い換えると、「相手の部屋に入ること」が「性的行為に同意したこと」を意味すると判断したわけでは全くない、ということだ。 結果的に、検察官側が「女性に同意がなかったこと」を立証できなかったといえるだろう。
●2)「嫌だと言っても無罪になる」?
次のような書き込みも目立っていた。 <被害者が「嫌だ」「痛い」「やめてください」と言っても無罪になるのか?> 今回の事件では確かに、被害者の女性は事件現場のマンションに向かうエレベーター内で男子大学生から性的行為を求められた際に「やだー」「ダメダメ」と言ったり、部屋に入ってから男子大学生と口腔性交した後にも「今日は無理です」「ヤバい。ほんとに嫌だ」などと伝えたとされる。 ただ、大阪高裁では、そうした女性の発言について前後の状況やその時の流れなどを詳しく検討したうえで、強制性交等罪の成立要件である「暴行・脅迫」が認められず、女性が性的行為に同意していた疑いを払拭できるだけの立証がなされていないとの判断を下した。 つまり、「嫌だ」「痛い」「やめてください」といった発言だけで犯罪が成立するかどうかを考えているわけではなく、被害者が置かれた状況やそこに至る流れなどを踏まえて検討した結果だ。 逆にいえば、状況や解釈が違えば、「嫌だ」「痛い」「やめてください」といった発言が有罪の立証につながることは十分に考えられる。