「源氏物語」を角田光代の現代訳で読む・橋姫③ 山里の家で薫が心惹かれた、琵琶の音と2人の姫君
「扇で月を呼べると昔から言うけれど、扇でなくてこの撥ででも月は招き寄せられたわ」と言って月をのぞいたその顔は、とてもつややかにかわいらしい人のように見受けられる。ものに寄りかかっている人は、琴の上に前屈(まえかが)みになって、 「夕日を呼び戻す撥のことは聞いたことがあるけれど、月を招き寄せるなんて、変わった思いつきね」と、にっこり笑っている様子は、もうひとりより少しばかり重々しくて気品がある。 次の話を読む:12月15日14時配信予定
*小見出しなどはWeb掲載のために加えたものです
角田 光代 :小説家