ポルシェ、新型マカンで描く未来 「女性と若い世代に乗ってほしい」
新作映画を世界に先駆けて発表する試写会にならい、自動車業界でも「ワールドプレミア」と銘打つイベントが定着しつつある。2024年、早くも話題をさらったのが、1月にポルシェが100%バッテリーの電気で走る電気自動車(BEV)の新型「マカン」をお披露目したシンガポールでのワールドプレミアだ。近未来的なエリアで異色の演出を施した会場は「SO COOL!」の賛辞に沸いた。そしてこのイベントは、次世代の顧客層開拓へ並々ならぬ意欲を示す、ポルシェの新戦略の試金石でもあった。 【写真はこちら】ポルシェの「夢」を詰め込んだワールドプレミアの全貌と新色「プロヴァンス」をチェック!
■お披露目はアートな特設ドームで
今やシンガポールの名所の1つとなった未来型植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」。高級リゾート「マリーナベイ・サンズ」にほど近く、植物とアートにあふれた園内の中心部には、昼間に太陽光を蓄積して夜に幻想的な光を放つ、巨大な人工樹スーパーツリーが林立する。イノベーションの活力と実験精神の刺激に満ちた、アジア随一の「都市国家」を象徴するエリアだ。 ここに1月25日、世界中の名だたるモータージャーナリストや、思い思いのセンスで着飾った自動車マニアのインフルエンサーが集結した。お目当ては、ポルシェが世界で初めて公開する人気多目的スポーツ車(SUV)「マカン」のBEVだ。スーパーツリーの前に登場したユニークな大型ドームの周辺に大勢の人だかりができた。 このドームは「6500枚の極めて薄いメタルを複雑なパズルのように組み合わせて作ったマカンのための駐車場です」。制作を手掛けた気鋭の建築家兼アーティストのマーク・フォーンズさんが説明する。「この空間には、緊張感や曲線など、ポルシェと多くの共通項があるんです。触れて、体験して、シェアしたくなる、そんな作品でしょう?」。なるほど、先端素材で形作られた有機的なフォルムは、ポルシェ車が備える独特の優美なルーフライン「フライライン」と重なるようだ。 クラブイベントさながらの音楽と光に包まれ、いよいよBEV「マカン4」「マカンターボ」の2台がヴェールを脱いだ。来場者たちは熱狂し、インフルエンサーはこぞってスマートフォンを向けた。他メーカーの新車発表会とは比べようもない、おおいに「映える」イベントはファッション誌関係者らもうならせた。 「私たちは夢がかなう場所に集まっています」。ポルシェ最高経営責任者(CEO)のオリバー・ブルーメさんが誇らしげに挨拶した。「シンガポールはアジアのイノベーションの中心地で、緑豊かな大都市です。未来への扉が開かれている土地です。だから私たちは新型マカンをここに持ってきました」