ポルシェ、新型マカンで描く未来 「女性と若い世代に乗ってほしい」
■最も売れているクルマをBEVに
2013年に発表されたミドルサイズのSUVマカンはスポーティーさと使いやすさ、優れたデザインで人気を集め、現在までに販売数84万台を超える、ポルシェでもっとも売れている車種だ。それだけに2019年、次世代マカンを完全電動化すると発表した際には、最も成功しているモデルをBEVにするという大胆な決断に業界は驚き、以来、多くの関心が寄せられてきた。 エクステリア デザイン ディレクターのペーター・ヴァルガさんも、マカンが成功した車だからこそ、BEVには大いに苦心したと話す。「秀でた操作性能と完成されたプロポーションを備えるマカンを電動化するうえで、現在の価値を損なわずにどう将来につなげるのか。これが大きな課題でした」 実際には、車体の高さ、幅、長さのバランスを崩さぬよう、細心の注意を払った。全長は従来よりも5.8センチ長くなる程度にとどめ、車幅はほぼ同じにした。「絶対に譲れないのは、ポルシェらしく見えること、ポルシェらしく運転できること、そして、ポルシェらしく唯一無二であること、この3つです。そして、日常で使いやすく、さらにスポーティーにすることが目標でした」(ヴァルガさん) 新型マカンは、その高性能ぶりにも目を見張る。曲面デザインの12.6インチディスプレーなど最大3つの画面を備えた最新ディスプレーや、ポルシェ初のAR(拡張現実)技術によるヘッドアップディスプレーなど、「スマホのように操作できる」デジタル装備は話題性じゅうぶん。最大 270 キロワットの高性能急速充電機能を搭載し、最大航続距離 613 キロメートル、時速100キロメートルまでの加速に要する時間は3.3秒(マカンターボ)だ。「ポルシェは完璧さを追求します。それがエンジニアリング(技術)の粋を集めた芸術だと思っています」とブルーメCEOは胸を張る。
■女性と若者、新たな顧客に
まさに話題ずくめの新型マカンのワールドプレミア。じつはこのイベントはポルシェにとって、今後の成長のカギを握る顧客戦略のスタートを宣言する場でもあった。 ブルーメCEOはこう説いた。「アジアでポルシェは新しいターゲットグループを獲得しつつあります。オーナーの年齢は若返り、より多くの女性たちが当社の車を購入しています。東南アジアは2023年の総売上高の16%以上を占め、まさに将来のパワースポットです。シンガポールは新型マカンを発表する完璧な舞台なのです」 ポルシェの次なるターゲットは「女性」であり「若者」。これまで明らかに手薄であった顧客層をグローバルで本気で掘り起こしていく。その強い意志を表明する場として、まさに両顧客層の獲得に成功しているシンガポールを選んだ、という背景を明かしたのだ。 新型マカンの細部をより詳しく観察すると、この新顧客戦略の理念が随所に反映されていることに気づく。