「GTO」「神の雫」などのヒット作を手がけた樹林伸が考える「いいMANGAの定義」[FRaU]
2024年、さらに激しく変わりゆく世界、そして日本。自分にとっての「ほんもの」を見極めないと、誰もが、今後どう生きていくのか、わからない時代になりました。日本からの「ほんもの」Authenticの「心地よさ」Luxury=Japan's Authentic Luxury、略してJAXURY(ジャクシュアリー)について、国内外で注目される、ジャンルや世代、国籍を超えた表現者、研究者の声を、言葉を、ここにお届けします。今回は、稀代のヒットメーカーである樹林伸さんをご紹介。 「GTO」「神の雫」「金田一少年の事件簿」「ブラッディ・マンディ」などのヒット作を世に送り出した樹林伸さん。漫画原作や脚本のほか、小説も手がける彼は、日本のMANGAが誇るべきはそのストーリー性であると語ります。
「アート・ノベル」と海外で呼ばれるMANGA
「神の雫」という作品は、実は、日本以上にフランスやイタリア、韓国や台湾などの国で、熱狂を持って迎えられている。とくにフランス政府からは、2019年、原作者である樹林さんに芸術文化勲章シュバリエが授与された。
「『神の雫』を発表して以来、僕がフランスに行くと、『ワインの新しい表現を提案してくれた』『フランス人にも、ワインをアートや風景に例える発想はなかった』と、みんな手放しで賞賛してくれます。でも、僕がとくに嬉しかったのは、『神の雫』によって、ワインの飲み手にも作り手にも、ワインはアートであるという考え方が浸透して、若い作り手が、ワインの世界に戻ってきていると聞いたことです」 フランス人による日本文化への評価の高さは、「神の雫」という作品に限ったことではない。フランスでは、日本のMANGA が大人気だが、それは、日本人が抱く「娯楽としての漫画」という感覚とは違い、「アート・ノベル」という捉え方をしている人が多いのだそうだ。
「僕が考えるいいMANGAの定義は、ストーリーに文学的要素を含んでいることなんです。日本の漫画は、絵が繊細なだけじゃなくて、扱っている題材も、『どう生きるか』を問うものになっているものが多いように思います。アメリカのコミックで描かれるのは、勝ち負けに終始するものがほとんどだけれど、我々のやってるものは、そうじゃなくて。絵が繊細で綺麗なのはもちろんのこと、ストーリー展開に徹底してこだわっているんです。週刊誌や月刊誌で連載してるから、『常に読者は初心者である』という意識も持って作っていて、決してスノビッシュにならないことも、MANGAのアート性を高めていると思います」