「年収400万円、奨学金の返済もあるし生活するだけで精一杯で、老後資金なんてとても貯められません。」それでも、将来のために貯金は必要ですか?
老後資金の準備より優先するもの
前段で「“人生山あり谷あり”想定外のことが起きるかもしれない」と書きました。その時に備えて、生活費の3ヶ月~半年分を生活防衛資金として貯めておくことがお勧めです。これは“もしも”に備えるものですから、いつでもすぐに引き出せる預貯金で準備します。 使うことがないほうが望ましい資金ですが、安心材料として確保してください。病気になった時や仕事がうまくいかなかった時など、お金の心配が重くのしかかります。備えがあれば、解決の選択肢が広がるかもしれません。 奨学金の返済や生活防衛資金の貯金などを軸にして、毎月の家計収支バランスが整えば、いよいよ長期スパンで将来設計を考えます。 <将来設計を考える> 「“楽しく生活しているので、将来も何とかなるさ”と50代を迎えたら、急に“老後資金は2000万円必要”と言われてビックリ、今から2000万円を貯めるなんて無理」 かつて老後2000万円問題が騒がれた頃、巷にあふれていた意見です。「若いうちから老後資金を貯めておこう」という真意は、手遅れにならないための警告にあります。 単純に考えても2000万円を貯めるのに、20年間の猶予があれば年間100万円ですが、10年間で準備するのなら年間200万円も必要です。さらにもし40年間という時間があれば、年間50万円で達成します。このように時間を味方につける効果は大きいのです。
まとめ
老後資金というと、リタイアした後のイメージです。ですがAさんには、それ以外にも将来の夢があるのではないでしょうか。物価高で生活費も上昇しています。「奨学金の返還に加えて老後資金の準備? そんなことをしていたら自分の楽しみは、いつも後回しになってしまう。勉強だってしたいのに……」そんな声が聞こえてきそうです。 もちろん、「老後資金は何とかなるさ」というつもりはありません。欲しいモノ、やりたいコトを整理して、自分にとっての優先順位を考えてみてください。すべてを手中に収めるのは無理ですが、諦めるのは早計です。老後資金を準備することに重点を置いて、やりたいコトを諦めることのないように、ライフプランを描くことから始めてみてください。 奨学金の返還が終了したら、これまで返還に充てていた金額を“やりたいコト用資金”と“老後資金”に振り分けて管理するのが得策です。資金を可視化することで貯蓄のモチベーションを維持できます。少額ずつでも継続することが肝要です。 出典 独立行政法人日本学生支援機構 令和3年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果 執筆者:宮﨑真紀子 ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
ファイナンシャルフィールド編集部