衆院選総括「二大政党制を求めることは不毛」上智大・中野教授に聞く(上)
自公与党の圧勝、民進党から分かれた希望の党と立憲民主党で明暗が分かれることになった今回の衆院選の結果をどうみるか。また、今後の野党再編の行方はどうなるのか。上智大国際教養学部の中野晃一教授(政治学)に話を聞きました。中野教授は、さまざまな課題がみえた選挙とし、「二大政党制を求める不毛さが見えた」、「希望の党は長く持つことはないのでは」と述べています。 【写真】衆院選「大山鳴動してネズミ一匹」見透かされた希望の曖昧さ
民進党の再結集には「ジレンマ」
民進党から分かれ、前原誠司民進党代表が合流を決めた希望の党は振るわず、一方で、9月に民進党代表選を争ったばかりの枝野幸男氏が代表となって立ち上げた立憲民主党は野党第一党に躍進し、明暗が分かれました。 中野教授は「希望の党の立ち位置がどこにあるのか。ワイドショーなどで華々しく取り上げられていたときと、その後失速していってから、だいぶん違っていって、有権者には分かりにくかったのでは」とみます。対して、立憲民主党は「下からの政治、みんなのための政治を掲げたということでメッセージとしては分かりやすかった」と分析します。 選挙は終わりましたが、野党第1党となった立憲民主党、そして希望の党、今回の選挙で無所属で出馬し、当選した議員、そして民進の参院議員と民進は現在4つに分かれた状態になっています。今後、どうなるのか。 中野教授は、民進再結成には「ジレンマがある」といいます。民進最大の支持母体連合が分裂状態で選挙戦を戦ったことを好ましく思っていないことや、直近に始まる国会や選挙は力を合わせないと勝てないことなどから「全体としては民進党に再結集していきたいというのが内輪の永田町の論理としては働くだろう」。しかし、一方で有権者に対しては「(衆院選を)それぞれの看板で戦ったのだから合流は許される話ではない」と安易な再結集は難しいとみます。 民進の看板を残された参院議員はどう動くのでしょうか。「当面は民進というラベルのもとに統一的に行動していこうとなるのでは」。民進党はこれから、党を清算するとなった場合、政党交付金など対処の難しい問題を抱えています。「前原さんが代表を続け、お金や組織を持ち逃げするのは許せないという声もあるので、そのプロセスを監督するためにとどまっているところもあるだろう」と話します。 ただ、2年後に参院選を控えることを考えると、「いつまでもその体制でいくわけにもいかない」とも。「希望の党は、惨憺たる結果に終わったので、そこに合流したい参院議員はそんなに多くはないだろう。多くは、立憲民主と連携しつつ、参院としてはしばらく民進で存続するのだろうが、政策的立ち位置が合意できなければ、いずれは股裂き状態になっていくこともある」とまだまだ波乱含みであるとみています。