2万色のファンデーションとダイバーシティ なぜ日本ロレアルは女性管理職比率50%超を達成できるのか
DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の重要性が叫ばれて久しく、その意義を認識している企業は多いでしょう。一方で、実践の状況は企業によってばらつきがあるのが実情です。そうしたなか、日本ロレアル株式会社(以下、日本ロレアル)では女性管理職比率が50%を超え、在籍社員の国籍は約30ヵ国にわたるなど、特定の属性に偏らない社員が定着し、活躍しています。その背景には、創業当時から根付く、多様性を認め、個を尊重するカルチャーがあるとのこと。上司や人事担当者、DE&I推進を担うメンバーは、社員にどのような姿勢で接し、どんな取り組みを行っているのでしょうか。日本ロレアル株式会社 ヴァイスプレジデント コーポレート・レスポンスビリティ本部長の楠田倫子さんにお話をうかがいました。
ファンデーションを2万色展開。日本ロレアルに根付く、多様性を重んじるカルチャー
――貴社では女性管理職比率が50%を超え、在籍社員の国籍は約30ヵ国にわたるなど、特定の属性に偏らない社員が活躍しています。DE&Iについての考え方をおうかがいできますか。 日本ロレアルでは、多様性を育むことがクリエイティビティや新たなイノベーションを生み、ひいては企業の成長の源になると考えています。そのためには多様性・公正性・包摂性、すなわちDE&Iの推進が非常に重要です。
そもそも社業である化粧品事業、「ビューティー」にとって、DE&Iの考え方はなくてはならないものです。ビューティーとは、「その方がその方らしく存在することを目指すもの」だと捉えていますが、文化的な背景や、気候条件、身体的特徴、こうありたいという欲求の方向性は一人ひとり違います。ビューティーをかなえること自体が多様性を尊ぶことであり、創業当時から企業風土として多様性を重んじるカルチャーがありました。ロレアルグループのセンス・オブ・パーパス「世界をつき動かす美の創造」でも、多様性を大切にしていくことをうたっています。 ロレアルグループはもともとフランスで誕生し、現在では全世界で37、日本国内では18の化粧品ブランドを展開しています。多種多様な個性を持ったブランドラインアップで、例えばファンデーション一つとっても大変多くの品数をそろえており、グループ全体で展開している色は2万3000色にものぼります。世界中の美に応えようとするには、それだけ必要なのです。 肌色ですら何万とあるのだから、人はみんな違って当然だという考え方を持っている社員が多いように感じます。 ――もともとのカルチャーとして、多様性を重視する考え方が根付いているのですね。そのような中でも、近年DE&I関連の取り組みが加速しているとうかがいました。 2022年に、私が本部長を務めているコーポレート・レスポンシビリティ本部が立ち上がりました。非財務パフォーマンス、いわゆるESGを見る部署で、DE&Iにも取り組んでいます。以前は広報部門が管轄していたのですが、専任の部署として切り出すことになりました。 部署が新設されたきっかけとして、2020年に「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」というサステナビリティへの取り組みがグローバルで始まったことが挙げられます。環境負荷の軽減だけではなく、社会課題の解決も含めて高い目標が掲げられました。また、ビジネスへの実装も求められるため、実現していくためには専任部署が必要ということになったのです。 DE&Iに関しては、2022年に有志を募って「DE&Iコミッティ」という社内委員会を立ち上げました。いわゆるERG(Employee Resource Group)で、リーダーを務める購買部のディレクターをはじめ、さまざまな部門に所属するメンバー5人によって運営されています。職場環境へのDE&I浸透を目的とし、私たちコーポレート・レスポンシビリティ本部のチームと連携しながら進めています。