2万色のファンデーションとダイバーシティ なぜ日本ロレアルは女性管理職比率50%超を達成できるのか
多様性を尊重しながら、日本ロレアルとしての一体感も醸成
――DE&Iコミッティでは、具体的にどのような取り組みを行われているのでしょうか。 具体的な活動としてはまず、日本最大級のLGBTQ+イベント「東京レインボープライド」のパレードへの参加です。企業スポンサーとしてイベントに協賛していて、希望する社員がパレードに参加します。LGBTQIA+当事者も、それ以外の人も、さまざまなきっかけで関わっています。 社内施策としては、「DE&I Week」と称し、集中的に啓発活動を行う期間を設けています。当社ではランチタイムを活用したウェビナーを日常的に行っているのですが、期間中はDE&Iをテーマにしたウェビナーを増やしています。昨年は、LGBTQIA+当事者を招いて、お話しいただきました。 その他にも、「お見合いランチ」という企画を実施。職種や年齢、国籍、ジェンダーなどをランダムにグルーピングし、仕事のことや自分自身のことなどについてランチタイムにカジュアルに話す機会を作りました。 ――取り組みが良い変化をもたらした事例はありますか。 当社では、店頭で接客をする美容部員を対象にしたアンコンシャス・バイアス研修に注力しているのですが、先日、お客さま相談室にうれしい声が届きました。 トランスジェンダーであるお客さまが日本ロレアルのブランドの商品を店頭で見ていたときに、美容部員が「お試しになりますか?」と声をかけたのだそうです。他のお店では「プレゼントですか?」と聞かれるそうで、美容部員が自分を顧客として扱ってくれたことがとてもうれしかったとおっしゃっていました。 社員の変化も感じています。DE&Iコミッティのメンバーの熱量がとても高く、楽しそうに活動をしているので、その様子を見て仲間に入りたいと言ってくれる社員が増えてきました。今年4月に開催された「東京レインボープライド」には、250人の社員がボランティアで参加しています。昨年は150人だったので、盛り上がりを感じます。「DE&I Week」のウェビナーの参加者も、他ジャンルと比較して多く、関心の高さがうかがえます。 ――社員からのボトムアップで動きが広がっているのは素晴らしいことですね。会社からは行動を促すようなメッセージを出しているのでしょうか。 2023年から、日本ロレアル独自の取り組みとして「One L'Oreal CAMPAIGN」を推進しています。「不揃いなチームで、超えていく。」というキャッチコピーを掲げ、イメージビデオやキービジュアルを作成しました。オフィス内のさまざまな場所にある動画スクリーンでイメージビデオを流したり、ネックストラップを作ったりして、浸透を図っています。 このキービジュアルに写っているのは全員、日本ロレアルの社員です。社員一人ひとりが違うことをより視覚的に表現するために、バラエティーに富んだ国籍の社員を起用しました。 キャンペーンはもともと、組織ごとのサイロ化に対する打ち手として一体感を醸成することを目指したもので、DE&Iというよりは組織論的な問題意識からのアイデアでした。社内にはさまざまな組織、職種があります。本社機能のある新宿オフィスだけでなく、研究所や工場などで働く社員もいます。その全員が日本ロレアルの屋根の下に集う仲間であるというメッセージを、シンボリックに表現するためのコミュニケーションキャンペーンとして企画しました。 そこにジェンダーや国籍など、いわゆるDE&Iの要素が加わり、メッセージがリッチになっていきました。多様性のあるメンバーが一緒に仕事をすることで、シナジー効果が生まれ、組織力も上がっていく。それが日本ロレアルの目指すべき姿であるというメッセージを込めています。