国民民主党の要求さえ実現しないならば、日本はもはや後進国だ
ただ、石破政権のもとで、今後の財政政策次第では、来年の日本株市場の姿が変わる可能性がある。所得減税、消費減税を掲げて総選挙で躍進した国民民主党の主張を、石破政権がどの程度取り入れるかで、日本の財政政策が変わるためだ。 財政政策が拡張的に作用すれば、2025年の日本経済は停滞から脱する。もし日銀の利上げが前のめりで実現しても、財政政策の押し上げ効果が上回り、2025年の日本株は、アメリカを超えるパフォーマンスが期待できる。
■国民民主党の主張は穏当、実現できないなら「後進国」 もっとも、国民民主党が提案している所得減税は、トランプ次期政権が掲げる税率の引き下げは伴っておらず、基礎控除などの引き上げによる減税である。各種の控除金額の引き上げは、過去数年起きたインフレに対応して引き上げられるのだが、これは多くの先進国でも行われている当然の政策措置である。いわゆるブラケットクリープ問題への対応であり、アメリカのように所得税率の基準となるテーブルは、インフレ率に合わせて毎年調整すべきである。
その意味で、国民民主党が主張する減税は、基礎控除だけに限定されているのだから、実はたいしたことはない。インフレの上昇に対応せずに、税制を調整しければ一方的な増税である。他国同様にインフレに応じて、控除や税率基準を調整するのは、減税というよりは、過度な税負担を行わないという至極当たり前の政策である。 国民民主党が掲げる基礎控除などの引き上げの根拠は、最低賃金の引き上げ幅に対応しており、自民党などは、これが過大だと考えているようだ。ただ、先述したとおり、インフレに応じて、税率テーブルを調整していないのだから、国民民主党が主張する基礎控除の大幅引き上げは、かなり穏当な政策に位置付けられる。
近年、税収が過去最高で増え続ける一方で、家計の可処分所得の増加はかなり緩やかだった。インフレ率の上昇が続いているにもかかわらず、税制を維持して、インフレタックスの負担が増えていることが大きく影響している。これを是正するのは常識的な対応ではあるが、仮に実現しないのならば、「後進国」の政策対応と言わざるをえない。 日本経済の1990年代半ばからの「失われた20年」は金融財政政策の失政によってもたらされたことが、アベノミクスの成果によって、多くの人が認識するに至った。