ガパオだけで130種類以上集めた本の著者にインタビューしたら奥が深すぎた【タイ料理好き必読】
──なぜそういうガパオが日本で誕生したのか。レシピだけでなく、「ガパオロジー」(ガパオ学)のページで、日本の食文化を考慮に入れつつ分析もしており、併せて読むことで、下関さんの食文化論を読み取ることができました。 ガパオの葉が日本国内で入手できなかった時代は、シソの葉やイタリアンバジルなどの代用食材に置き換えて作ってきたわけで、そういった「日本のガパオ史」についても詳しく解説してくださいましたね。 下関:日本のガパオの歴史だけではなく、タイのガパオ史についても調べて書き進めました。ガパオの発祥や、ガパオがタイ人のソウルフードとされる背景などについて考察しています。
サブ材料たっぷりの「邪道の極みガパオ」とは?
──本書では、その昔、宮廷で食べられていたという「宮廷ガパオ」を現代によみがえらせたものや、50年前のタイのレシピで作ったガパオも掲載しましたが、現在食べられているガパオと、大きな違いはありますか? 下関:もちろん「ガパオで炒めたもの」という基本は変わりませんが、タイでも、時代によって調味料やメイン食材、サブ食材として入れる野菜に流行があるようです。例えば、タイのSNSなどでは、「ガパオに何の野菜を入れるか」がよく話題になります。 ──日本のタイ料理店では、赤ピーマン、緑ピーマン、タマネギが入っていることが多いですよね。 下関:タイでもタマネギが入っていることがありますが、マストではありません。日本でピーマンやパプリカを入れるのは、タイのプリックチーファー(辛さ控えめの大きめな唐辛子)の代用から始まったのではないかと思っています。
──本書で「邪道の極みガパオ」として紹介したレシピには、さまざまな野菜が入っていました。 下関:私が住んでいた2000年ごろのバンコクの屋台では、ひき肉のガパオに、かさ増しの意味もあるのでしょうが、ササゲを入れることが多く、ベビーコーンやニンジンなどのサブ材料が入るお店もよくありました。最近のタイでは、野菜を入れるのは邪道という意見もあり、野菜を入れずにガパオの葉をバサッとたっぷり入れるスタイルを好む人が多いですね。 ──野菜を入れないことで、よりガパオの葉の独特な香りが楽しめる気がします。 下関:ガパオの葉は、他のハーブにはないツンとくる苦みと、土っぽいような、大地のような香りがします。これが材料や調味料とからむと、あ~ガパオだなぁ~という味わいになるんですよね。