「80代の母が倒れて骨折、入院」介護の始まりに備えること、決めること 経済ジャーナリストが実体験をもとに解説「入院中に退院後のことを決めることが大事」
リハビリ病院で「自宅での暮らしを取り戻す」
「骨折の場合、リハビリ病院には最大で180日(半年)いることができます。母の場合は、入院で1か月、リハビリ病院で3か月過ごし、自宅でトイレには自分で歩いて行ける状態まで回復しました。 入院・リハビリの期間は、在宅介護の準備に充てられます。ケアマネさんと相談し、自宅に手すりや介護用のベッドを搬入するなど、いろいろとやることは多いのです」 しっかりリハビリをして、自宅に帰ってからもある程度自立した生活ができるようにしておくことが大事だ。また、病院に自分の要望を伝えることも大切だという。 「母親が倒れてから、数か月後、今度は父親が遠方で倒れたのです。搬送された病院は自宅からかなり離れた場所でした。そのままその病院に入院してしまうと、私がその病院に通うのが大変だったため、自宅の近く病院に転院できないかと、病院についてから交渉もしました。 たまたま自宅から近い総合病院に空きがあり、3日後には救急車で搬送する形で転院することができました」 「高齢の場合、どうしても入院期間が長期になりがちです。医療費は1割などの負担とはいえ、それなりにかかるもの。入院の手続き時に、『高額療養費※を適用してほしい』ということを必ず、窓口に伝えておきましょう。そうすることで、最初から高額療養費の範囲での請求額となります。 一度立て替えて、後から申請となると、お金が戻ってくるのに数か月かかります」 ※月にかかった医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合、軽減(払い戻し)される制度。
介護の「キーパーソン」を決めておこう
介護が始まるにあたっては、家族が“その先”を知っておかねばならない。酒井さんは「子供がすべきなのは判断と決断です。きょうだいがいる人は、親が元気なうちにキーパーソンを決めておくべきです」と続ける。 介護におけるキーパーソンとは、「本人の代理となり、重要な判断と手続きを行う人」を指す。 「キーパーソンの役割は、本人の意思を確認、介護保険の手続きや、介護サービスの契約、ケアプランの承認と決定、家族代表としてケアマネと話し合うこと、親族の連絡窓口になること、もしもの時の連絡先になることなど、多岐に渡ります。 キーパーソンには、親の意思を尊重しつつ、俯瞰的・客観的に物事を判断することなどが求められます。ときには、ケアマネに提案されたことを“それでいいです”とすぐに受け入れるのではなく、“もっといい選択肢はありませんか?”と最善の道を探るために、交渉をする必要もあります。 我が家の場合、親の家の近くに住んでいて、ある程度時間に都合がつく、そして介護やマネーの知識がある長女の私がキーパーソンとなりました」