【ファッションデザイナー・浅川喜一朗】服づくりへのひたむきさが、世界へ届ける力となる
貪欲に学び続け、よりいいものを届ける
パリコレへの切符も手にし、いっそう勢いを増す浅川だが、心の奥底にはクリエイターとしての焦りを抱えているらしい。自身を追い込む焦りが、彼の行動を突き動かしているのだろう。 「子どもの頃からファッションを仕事にすると決めていた人たちと比べると、一般大学を卒業してセレクトショップ勤めからキャリアを始めた自分は出発が遅れています。最初に服づくりをしたのも、キャロルでお客様のサイズに合わせて1点もののリメイクデニムを仕立てた時です。このような経歴ですから、世界の偉大なデザイナーやファッション関係者たちの実力に早く追いつきたいのです。もっといいものをつくり、もっと多くの人に届けたい。いまは勉強して勉強して、自身の内側にインプットしてはアウトプットする生活。いつかは仕事に余裕が生まれるかもしれませんが、いまは頑張りどきです」 忙しい日常の中でも、デザイナーと店のオーナーとの役割を浅川はしっかり振り分けている。シュタインのコレクションが充実するキャロルは、あくまでもセレクトショップ。「店が仕入れるブランドのひとつがシュタイン」という位置づけで展開している。 「店のお客様には、自分が新しいファッションに感動する気持ちを一緒に感じていただけたらと願っています。世の中にはいい服がたくさんあります。シュタインをそんな服を集めたこの店に並べるのにふさわしいブランドに成長させていきたいです」 ものづくりに情熱を燃やしながらも、その感情に溺れず冷静に自身を見つめる浅川。日本のモード界が期待を寄せるプレッシャーにも耐えながら。彼の謙虚な人柄は、世界のファッションピープルにどのように映るだろうか。
<WORKS> ファッション プライズ オブ トウキョウ
東京都の一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構が主催し、毎年一組のファッションデザイナーが選ばれる海外ビジネスのサポート制度。シュタインは25年度に選出。過去にはオーラリー、CFCLらが受賞した。
シュタイン 24AWコレクション
欧文ブランド表記をsteinからsssteinに変更し、ロゴも刷新して世界戦略に歩みを進めたコレクション。ベースとなる色彩は黒、グレー、カーキ。発表したルックでは女性モデルも着用しているが、服の基本構造はメンズだ。
セレクトショップ「キャロル」
2021年に現在の閑静な表参道エリアに移転した、浅川が運営するセレクトショップ。旬の感性漂う国内外からの買付け商品に加え、国内で最もシュタインの品揃えが豊富だ。 住所:東京都渋谷区神宮前5-45-3 コスモビル1F
写真:野村佐紀子 文:一史