レバノンで爆発したポケベル、製造元住所はハンガリーの小さな郵便局
(ブルームバーグ): レバノンで現地時間17日午後3時半ごろ爆発し、数千人の死傷者を出したポケベルの製造元をたどると、ハンガリーの首都ブダペストの高速道路と古びた鉄道駅に挟まれた、小さな郵便局に行き着いた。
そこが、爆発したポケベルを製造したBACコンサルティングの登記された住所だ。このポケベルブランドは台湾企業のゴールド・アポロ(金阿波羅)が持つが、商業契約によりBACが生産できることになっていた。
だが、郵便局の女性はBACについて知っているのは、代表を名乗る人物が月に一度、郵便物を取りに来ることだけだと話した。BACの最高経営責任者(CEO)の住所として記載されているパリの建物は、フランス国家憲兵隊の兵舎だった。BACは「仲介企業で、ハンガリー国内に製造・操業の拠点はない」とハンガリー政府は説明した。
ゴールド・アポロの許清光・董事長(会長)は、BACが2年前にポケベル「AR-924」のライセンス生産の許可を要請してきた時には不可解に思ったが、ありふれた取引だと見なして契約締結を進めることにしたと語った。
許会長は台湾で記者団に対し、「自分は長年このような取引をしてきた。いまや、こんな汚点がついてしまった。このような政治テロ事案に、なぜ自分が巻き込まれたのか」と嘆いた。
歴史上で最も大胆な「サプライチェーン」作戦の一つだと専門家が指摘する今回の事件について、レバノンはイスラエルの対外情報機関モサドによる攻撃だと主張した。イスラエル当局者は堅く口を閉ざしているが、同国のアナリストは親イラン民兵組織ヒズボラのメンバーを標的とした極秘作戦だと評価した。ヒズボラの攻撃により、イスラエル北部に住む数万人が避難を余儀なくされている。
だが、このポケベル爆発では民間人も犠牲になり、少なくとも12人とされる死者のうち2人は子供だ。国連のターク人権高等弁務官は「甚大な不安と恐怖が引き起こされ」、民間人の被害は「容認できない」と非難。独立した調査を呼びかけた。