伊藤忠の文書流出「平社員でも年収2000万」の真偽 「雇われたい…」と給与制度改定の文書にSNS沸騰
伊藤忠商事ではありませんが、トップ3の総合商社の社内報に『社長から次長へ』というエッセイが寄稿されて話題になったことがあります。取引先である上場企業を再建する必要があって、優秀な商社マンが社長として送り込まれます。その人が社長として見事会社を立て直して商社に戻ったら、用意されていたポジションが次長だったという笑い話です。40代の働き盛りの人材は、商社ではまだまだ出世街道の真ん中へんなのです。 よく似た別の話を紹介します。私がいたコンサルファームで、その当時、三菱商事からローソンに出向して成功していた新浪剛史社長(当時)が商社に戻るかどうかを議論したことがあります。商社出身のコンサルは口をそろえて「戻るわけがない」と断言していました。
他にいけばプロ経営者として活躍できるのに、戻ったら部長止まりだというのです。商社では出る杭は居心地が悪いとも言われました。その意見が正しいかどうかはわかりませんが、その後、新浪氏はプロ経営者としてのキャリアを歩んでいます。 一方で課長あたりまでは大きな差がつかないというのも商社では常識のようです。この点は、転職会議などのサイトでの従業員の書き込みでも確認できます。ある商社OBによれば「50歳になるまで、大半の社員に“自分も役員になれるかもしれない”と錯覚させるのが商社の人事制度の神髄だ」といいます。
なにしろ総合商社の投資先を「戦線」として捉えると、その戦場はとても数が多いのです。伊藤忠商事の約4100名の正社員たち(注:海外現法や投資先などへの出向者を含めると人数はこれよりも多い)が老境にさしかかるまで「自分は会社から認められている」と信じていたほうが会社はきちんと回るのです。 その点で、先述したMBOという目標管理制度は総合商社の中でのメリハリをつけるのに都合のいい制度です。目標を達成したら年収が上がるのですが、次の年の目標はさらに上がるので連続して目標を大幅達成するのは簡単ではありません。毎年、毎四半期、別のヒーローが出現するように報酬制度を運用することができます。