性同一性障害乗り越え 歌手・麻倉ケイトの生き方
学園祭ライブでカミングアウト
彼女はその間、男性的な筋肉を嫌ってホルモン治療を施し、精巣摘出も実施した。そこに至るまで一時期は人生のどん底を味わい、自傷行為をしたことも。それを事務所社長に泣きながら怒られたこともあった。過去のさまざまなエピソードは、自叙伝『五十六億七千万』(CD付、光文社)に詳しく綴った。 ──染色体が人と違うと? ケイト もともと男性機能が少なくて、染色体を両方持っているんですよ。XYが男性で、XXが女性、でも私はXXY。インターセクシャルです。実際、私は20歳くらいの時から胸が出てきて。気になって病院に行ったら乳がんって言われて。男性にも100人に1人は乳がんがいてるみたいです。で、詳しく調べてもらったら、女性ホルモンが多いって言われ、染色体を両方持ってるのがわかったんです。だから薬ではなく、自然に女性化(女性化乳房症)が始まってたんです。私的にはうれしかったですけど。 ──カミングアウトはステージで? ケイト 滋賀医科大学での学園祭ライブで、ついにカミングアウトしました。ここの学園祭には毎年ずっと出てて、昨年が12回目。2009年の時のライブで、心が女性なんですって発表したんです。そしたら、みんなが頑張れとか、そんなん関係ないとか、励ましてくれた。反発が多いと思ってたけど…。それから自分でも楽になった。人が変わったとも言われるようになり、性格も明るくなって、よくしゃべるようになった。前は言いたいことも言えなかったから。自分を作ってたというか、なんでこんなふうに生まれたんやろうって自信がなかった。でもそれからは、すごい楽になった。自分を好きになって、好きになると自信につながった。ようやく前向きに自分のありのままになれたんです。
「自分らしく」をテーマに人権擁護の講演も
以降は初音ミクスタイルのシンガーとして独特のステージを展開する。身体が両性なら、声も両性で、男性の声と女性の声とが出せるのも魅力か。また、「自分らしく」をテーマに人権擁護の講演などにも同じ衣装で出演している。無理だと言われても、前例のないことに諦めず、常にチャレンジする。失敗を恐れていては何も始まらないことを彼女は、楽曲に乗せて力強く伝えていく。 29日には奈良の談山神社でミニコンサートを行う予定。 (文責/フリーライター・北代靖典)