坂口健太郎の生演奏&生田斗真の心音を採取 「さよならのつづき」録音スタッフが明かす製作秘話
ポスプロでの工夫で映像に厚み
撮影後のポストプロダクションに関しては、リレコーディングミキサーの浜田と音響効果を担当していただいた松浦大樹さんを中心に、さまざまな工夫が施されています。このポストプロダクションのタームでは、現場で僕が収録してきた音声の使い方はもちろん、ゼロベースでの新たな音の発想や、撮影時にはそこになかった音を多く足すことにより、撮影してきた映像の厚みを出すクリエーティブが多く発生します。 先日Xでもポストさせていただきましたが、今作のとても大きなクリエーティブの一つとして、成瀬に移植された雄介の心音は、実際に生田さんの心臓の音をさまざまなマイクで収録させていただき、作品に使用させていただきました。 アフレコ時に生田さんにお願いしてスタジオ内で軽い運動などをしていただき、ダミーヘッドマイクに聴診器を組み合わせたものや、聴診器の中に直接マイクを仕込んだものなどを使いながら、パターン違いの心臓音を収録させていただきました。松浦さんいわく「生田さんの心音はリズムが一定でめちゃくちゃきれい」だったそうです。(笑い)
コーヒーをいれる音にもこだわり
そのほかにも撮影後に、実際にハワイの空港や街、コーヒー農園で時間帯を分けて朝、昼、夜の雰囲気を丁寧に収録していただき、作品のバックグラウンドとして使用しています。また松浦さんには、今回の非常に重要な要素である「コーヒー」の音にこだわっていただき、劇中に登場するオールドプロバットと呼ばれる焙煎(ばいせん)機を実際に所有されている方を訪ねて駆動音を録っていただいたり、コーヒーをいれる音はサーバーやフィルターに小型のマイクを付けて丁寧に再録していただいたりしました。また、6話で登場するLINEを模したチャットでの表現は、監督から2人の心情をサポートする可愛らしいものにしたいというオーダーがあり、架空のものを制作したとおっしゃっていました。 無事に配信され、自宅環境でも全話鑑賞し直しましたが、ニアフィールドミックス(家庭環境の小さなスピーカーやイヤホンなどでの視聴を前提とする音量感の音作り)という、劇場作品とは違う配信環境における最上のミックス、音作りをしていただいた音響チームの技術力に驚きと感謝を述べて、この文章を閉じたいと思います。「さよならのつづき」はNetflixで全話配信中です。未見の方もぜひ、一人でも多くこの作品に触れていただけたらうれしいです。
録音技師 根本飛鳥