坂口健太郎の生演奏&生田斗真の心音を採取 「さよならのつづき」録音スタッフが明かす製作秘話
Netflixで配信中の「さよならのつづき」という作品で現場録音を担当している根本飛鳥と申します。今回は撮影から編集までの音づくりの小話を皆様にご紹介できる機会をいただきましたので、筆を走らせています。北海道からニュージーランドまで、約7カ月間の壮大なロケを敢行して作り上げた非常にファンタジックなラブストーリーの音響の裏側に、一体どんな作り手の思いがあったのか。鑑賞後にお読みいただけると、また一段と作品の見え方、音の聞こえ方が変わる内容になっていると思います。お楽しみいただければ幸いです。 【写真】北海道・小樽駅。電車がいなくなっるのを待って、撮影に臨んだ 「さよならのつづき」撮影シーン
「ガンマイクで」の注文に応えるべく
「僕はガンマイクの音が好きです、今回はガンマイクで音を録(と)っていただきたいです」。これは監督の黒崎博さんと初めてお会いした日に言われた言葉でした。複数台のカメラを使用しさまざまな画角を同時に撮影したり、クレーンなどの特機を常用したりする昨今の撮影状況だけを加味すると「ガンマイクだけで音を録る」というのは非常に難しいのが現状なのですが、とにかく「ガンマイクで収録したような空間性を損なわないナチュラルな音で役者さんのお芝居を収めたい」ということなのだと私は考え脚本と向き合い、機材を選定し撮影に臨みました。 私はいつも作品の音を収録するときは自分の好みよりも監督やプロデューサー、そして作品全体のトーンに合った機材の選定をします。今回は監督からいただいた「ガンマイクで音を録りたい」というメッセージから普段使うものよりも撮影空間の雰囲気(反響やアンビエンス)を自然に収録できることができるガンマイク(SCHOEPS CMC641)をメインに選択し、サブとして環境に応じてSENNHEISER MKH-416、SCHOEPSのフワッとした音像を補完できるキリッとした描写力の高いワイヤレスマイク(WISYCOM MTP60/DPA6060)を組み合わせることでナチュラルで聞きやすくも、明瞭性や説得力を損なわない現場での音声収録を目指しました。