坂口健太郎の生演奏&生田斗真の心音を採取 「さよならのつづき」録音スタッフが明かす製作秘話
可能な限り待って素晴らしいシーンに
今回の電車周りの撮影で一番印象的だったのは、6話でのさえ子とミキの対峙(たいじ)シーンでのことでした。撮影は当初終電付近の小樽駅ホームで行われる予定でしたが、いざ撮影を始めようと準備していると、周りのホームに稼働を終了して車庫に戻る前の車両が何台も入線してきて、エンジンを付けたまま停車してしまいました。全体的なノイズフロアが強烈に上がり、かろうじてお芝居は可能ですが収録としては非常に厳しい環境になってしまったのですが、撮影スケジュールの問題もあるので、段取りという役者さんのお芝居を全スタッフで確認する工程の後にメインスタッフで集まった時に「可能な限り待って、全ての電車がいなくなってから撮影をしたい」とコールをしました。 その時に僕以外の撮影・山田康介さんや照明・木村匡博さんなど、メインスタッフの方々が同調してくださり「絶対に待った方が良いから待ちましょう」と言っていただき、そこから数時間の中空きを経てあのシーンが撮影されました。全話を通してみても非常に緊迫した大事なシーンを全部署が協力して環境を作り、撮りあげた素晴らしいお芝居になっていると思います。 また、今作の音響周りで非常に印象的なのが成瀬(坂口健太郎)や雄介(生田斗真)がピアノで演奏をする「I WANT YOU BACK」だと思います。これは他のさまざまな媒体でも語られていますが、坂口さんや生田さんの演奏は撮影中一切吹き替えをすることなく全てご本人が演奏されています。一般的には、撮影では手元などは監修の先生に弾いていただくことが多いのですが、今回は監督の強い希望もあり、俳優部は長期のピアノ練習を経て全て自身の手で弾いています。完成された作品の音に関しても、撮影しながら僕が収録した現場のピアノの音と編集用の音源をうまく混ぜ合わせることにより、非常に説得力があり、感情の表現された素晴らしいシーンにできたと思っています。