「中身はどうせトヨタだから」といわれてきたレクサス車「なぜ最近、走りがよくなった?」開発陣が挑む「味磨き活動」の成果とは
走りの懐が大いに深まった最近のレクサス車
先日、レクサス「LM」に6人乗り仕様「LM500h“バージョンL”」が設定されたのを機に開発責任者に話を聞いたところ、「実は本来ならありえないほど遅いタイミングで、車体後方にブレースを1箇所追加した」という話が出てきました。 【画像】「えっ!…」これが走りのいい「レクサス車」です(47枚) 具体的には、リアサイドメンバーに取りつけられたリアクォーターブレースのことです。試したところ、走りの質への寄与が非常に大きく「やはりこれをお客さまに味わっていただきたい」という思いから、採用に踏み切ったのだという話でした。
それを契機に改めて振り返ってみると、最近のレクサス車はそれまで使っていなかったアイテムを使ったり、手当をしていなかった箇所の強化をおこなったりしていることに気づきました。そして実際、これらのモデルは、いずれも走りの懐が大いに深まっているという印象を受けます。 個人的にその進化に最も驚いたのは、2023年12月に登場した新型「UX」です。そのボディには、ラジエーターサポートブレース追加や、ロアバックパネル下端のガゼット追加が施されていました。ちなみに、ラジエーターサポートブレースとはフロントのサイドメンバーとラジエーターサポートを締結するロッドで、これは「LM」にも使われています。 実際、新しい「UX」の走りは、直進時からステアリングの据わりがよく、操舵応答もリニアでしかも深い舵角までひと筆書きのような追従性を見せる、素晴らしいフットワークに進化していました。 乗ったのは、雨のそぼ降るテストコース・Toyota Technical Center Shimoyamaのワインディング路だったのですが、楽しくてどんどんペースが上がってしまったのをよく覚えています。 そして「LM」。こちらも、リアコンパートメントに居れば至極快適に過ごせるというだけでなく、実は運転しても楽しめるクルマに仕上がっています。 念のため、もう少し詳しく書いておくと、「LM」はとてもスタビリティが高く、高速域に至るまで高い安定感を発揮する一方で、ステアリングを切り込むと正確な反応でクルマが向きを変えてくれます。 それをして「楽しめる」としたわけですが、実際それは、後席に座る大事なゲストに不快な思いをさせない運転を、容易に可能にしてくれる性能といい換えることもできます。後席の快適性と前席の楽しさは背反ではなく両立する、いや実は不可分ですらあるというわけです。 いずれにせよ「LM」は、正直いって想像以上に意のまま感の強い走りを可能にしてくれるクルマといえます。誤解を恐れずにいえば、その点でいえば現行「LS」などよりも上かもしれません。 ●「味磨き活動」で得た知見がレクサスの走りを変えた こうしたレクサス車の走りの変化、いや進化に、上記のブレース類が貢献しているのは間違いありません。 ですがレクサスといえば、これまでも構造用接着剤、レーザースクリューウェルディングといった独自技術によってボディ剛性を高めてきていたはず。一体、何が起きているのでしょうか? 疑問に思い、問い合わせたところ、興味深い答えが返ってきました。実は今、レクサス内部では「味磨き活動」がおこなわれていて、ここに挙げたような一連のボディ剛性強化アイテムは、そこで得られた知見に基づいて採用されたものだというのです。 この「味磨き活動」のねらいは、まずはレクサス車全体の走りの味に統一感を持たせること。それこそ「LX」から「LBX」まで、どのモデルに乗っても同じテイストが感じられるように、というものでした。