菅首相が掲げる「脱炭素社会の実現」 カギとなる洋上風力発電は、日本で広まるのか
洋上風力の推進に向けては、政府と事業者、メーカー、建設会社などの産業界による「官民協議会」が設置され、昨年12月には「洋上風力産業ビジョン」を策定した。前出のエネ庁・山本氏は「ビジョン」の取りまとめに至った経緯をこう説明する。 「洋上風力を主力電源としていくためには、産業競争力を強化し、発電コストを低減していくことが必要です。コストが高いままでは国民の理解が得られず、継続的に洋上風力発電所設置の案件を形成することが困難になります。そこで官民による協議会が設置されました。産業界からは『カギとなるのは投資の拡大だが、そのためには日本の市場拡大の見通しがないと難しい』という声があり、上記ビジョンでは、政府による導入目標などが設定されました」 こうして出されたのが梶山大臣の導入目標だった。昨年6月に先行して促進区域に指定されていた長崎県五島市沖で公募が始まったのに続き、11月には三つの促進区域で公募が始まった。その一つが冒頭の銚子沖で、他の二つは秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖の北側・南側だった。
銚子沖に参入したのは、関東エリアでは有数の好風力地であり、海域が遠浅で海底に杭や基礎を打ちつける「着床式」の建設が可能だったからだと東電RPの福本氏は言う。 「関東では一番風が良いエリアです。もし事業者として選ばれた場合、見学された風車の付近に40本程度の風車が立ち並ぶようなイメージをしています」 設置のポイントとなるのが「沖合からの距離」と「水深」だ。沖合にいくほど風は強くなるが、その分メンテナンスは大変になる。送電ケーブルも長くなるため、コストも増す。 一方、水深が浅ければ着床式で建設できる。着床式とは風車の支柱を海底まで到達させて固定する方式だ。ただし、50メートルを超えると着床式では難しい。そこで考案されているのが「浮体式」だ。風車を海面に浮いた状態で係留して安定させる。