菅首相が掲げる「脱炭素社会の実現」 カギとなる洋上風力発電は、日本で広まるのか
日本の電源構成で10%を占める可能性
ただし、梶山経産相が掲げた「今後10年間で原発10基分に当たる10GW」という目標は、じつは言葉足らずな部分がある。
原発1基あたりの1時間の発電容量は約1GWだが、メンテナンス等で運転を停止している間は発電できない。発電容量をフルに稼働した場合に比べて、実際に発電できた割合を「設備利用率」と言うが、2010年までは年間およそ60~85%の間を推移していた。 洋上風力発電もこうしたメンテナンスは必要で、風が十分に吹かない時間も考慮すると利用率は低いと牛山氏は指摘する。 「海外などの実績を見ても、洋上風力発電の設備利用率は一般的に30%程度です。つまり、同じ10GWの発電容量を設けても、洋上風力は原発の半分以下の電力しか生み出せないというのが実情なのです」 ただし、設備利用率が30%でも、日本の電源構成で10%前後を占めることになれば、存在感を示せるはずだ。現状は0%に等しいため、躍進ともいえる。 銚子沖を含む促進区域の公募は今年5月下旬に締め切られ、10~11月ごろに事業者が選ばれる。運転開始はその数年後になる。まさにいまがスタート地点だ。 洋上風力発電は日本にとって脱炭素社会の実現、経済効果の両面から大きな希望となりうる。しかし、その希望を現実のものにできるかはこの数年の取り組みにかかっている。
小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。