ワクチン接種直後の女性死亡 愛知県医師会が検証結果報告「体制に問題」
愛知県愛西市の新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場で今月5日、同市内の女性(42)が接種直後に死亡した問題について、愛知県医師会(柵木充明会長)は17日、名古屋市内で記者会見を開き、検証結果を報告した。 死亡までの経緯などから、女性の症状はアレルギー反応であるアナフィラキシーの「最重症型だった可能性がある」との見方を示した。ただ、現場ではそれを判断する間もなく症状が進行した。これについて、同医師会は、アナフィラキシーショックに対応するアドレナリン注射ができない「体制に問題があった」などと結論付けた。 野田正治副会長は、こうした事例は非常に稀だとした上で、「今後(全国の接種現場で)想定しなければいけない」と指摘。しかし、現場の看護師が独自の判断でアドレナリンを注射するなどの対応を取ることについては、「現在の集団接種会場のシステムでは難しい」として、接種体制を全国的に見直すよう提言する意向を示した。
当初は想定外の症状もアナフィラキシーなら「最重症型」
同医師会は今回の問題を重大事案と位置付け、15日に医療安全対策委員会を開き、医師や学識経験者、弁護士など約20人で当日の対応や医療的なデータを検証した。 それによると、女性はワクチン接種から約7分後、咳が出たために看護師によって車椅子で救護室へ運ばれた。その4分後に医師が初診をしたときには、既に顔面蒼白で呼吸苦があり、酸素飽和度も60%に低下していた。酸素投与などが行われたが、泡沫状の血痰を大量にはき、意識レベルが低下するなど症状は急激に悪化していった。 同委員会担当の渡辺嘉郎理事は、「この時点ではアナフィラキシーを想定させる症状ではなかった」とし、泡沫状の血痰などはむしろ「急性肺水腫」に特徴的な症状だったと説明。死亡診断書の病名としては「急性左心不全」や「致死的不整脈」で、死亡後の画像診断では高度の「肺うっ血」の所見が認められた。アナフィラキシーショックだった場合は「最重症型」と考えられるが、病理解剖はされていないため最終的な病態の解明には至らなかったという。