骨がハサミで切れるほどふにゃふにゃに…最悪の場合「寝たきり」を招く抗炎症剤「ステロイド」の深刻な副作用
■よく聞く「ステロイド」は骨粗しょう症の副作用が 〈続発性骨粗しょう症〉 続発性骨粗しょう症は、特定の病気や薬が原因で起こるものをいいます。 なかでも「ステロイド性骨粗しょう症」は患者数が多く、若い層や男性にも発症することから社会的影響が大きいため、日本骨代謝学会は「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014年改訂版」を出して(検索すると無料で読めます)、医療現場への注意を呼び掛けています。 読者の皆さんも「ステロイド」はご存じですね。ステロイドは、強力な抗炎症、抗免疫作用を持ち、関節リウマチ、膠原病(こうげんびょう)、血液疾患、呼吸器疾患、腎疾患、消化器疾患、皮膚疾患を含め、多くの治療に使用されています。しかし一方で、次のような多彩な副作用が知られており、特に骨粗しょう症は副作用の4分の1を占めています。 ---------- ●感染症 ●離脱症候群(薬の服薬を急にやめるなどで起こる症状。めまい・頭痛・吐き気・だるさ・しびれ・耳鳴り・イライラ・不安・不眠・ソワソワ感などの症状がみられる) ●精神障害 ●糖尿病 ●満月よう顔ぼう(ムーンフェイス:満月のように丸く、ふっくらとした顔になる) ●消化性潰瘍 ★骨粗しょう症 ●緑内障・白内障 ●高血圧 など ---------- ■はさみで切れるほど骨が軟らかくなる 私たちのチームの研究によって、ステロイドはからだのサビであるAGEsをまったく増やさないため、悪玉架橋をできなくするものの、骨の強度を高める善玉架橋もまったくできないようにしてしまうことがわかっています。 骨の強度が低下し、骨の中のコラーゲンが赤ちゃんのようになってしまうため、ステロイド性骨粗しょう症の人を手術すると皮膚も腱もふにゃふにゃで、骨もはさみで切れるほど軟らかくなっています。診療では、この骨質の異常を見逃さないようにするのが重要です。 〈骨軟化症〉 正常な強い骨が形成されるためには、骨基質の石灰化(リン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどが沈着すること)が必要です。骨軟化症は骨や軟骨の石灰化が障害されることにより「類骨」の割合が増えることで起こる病気です。 類骨とは、未熟で弱い(軟らかい)未石灰化部分のことで、類骨の割合が増えると、偽骨折(日常生活で起こるなかなか治らない骨折)による骨の痛みや骨折、筋力低下など、さまざまな症状が生じます。 同様に骨や軟骨の石灰化障害がきっかけとなる小児の病気に「くる病」があります。成長期に発症するものは「くる病」、それ以降に発症するものは「骨軟化症」と呼ばれます。