骨がハサミで切れるほどふにゃふにゃに…最悪の場合「寝たきり」を招く抗炎症剤「ステロイド」の深刻な副作用
■「いつのまにか骨折」を招く「低骨密度+骨質劣化型」 3タイプのうち、最も注意が必要なのは、IIIの骨密度・骨質ともに低い「低骨密度+骨質劣化型」です。この人たちは骨折のリスクが健常な人たちに比べて7.2倍に跳ね上がります。 7.2倍とは大変な数字で、治療しなければ、将来高い確率で骨折を避けられません。その上、背骨の「いつのまにか骨折」が重症化する確率も高く、かつ大腿骨近位部骨折のリスクも高いことも、私たちの研究で明らかになっています。 ある病気の発症を引き起こすリスク要因を「リスクファクター」と呼びますが、このリスクファクターは2つ重なると、×(かける)2、ではなく、相乗的にリスクを上昇させます。 たとえば心筋梗塞や脳梗塞は、糖尿病があって腎機能も悪いとなると、その罹患リスクはダブルパンチでアップします。 糖尿病だけであれば心筋梗塞のリスクは病気がない人の2倍ですが、そこに腎機能の低下が加わると、どちらか一方だけでも心筋梗塞を起こすので、相乗的に危険が増します。だから、タバコを吸っていて、糖尿病はないけれども腎臓が悪いという人は、リスクファクターが2つになります。 ■骨密度も骨質も治療でリスクを下げられる こういった場合は、医師としては、腎機能低下は止められないため「タバコをやめましょう」と指導することになります。合計のリスク値を下げるためです。 幸いにも、骨粗しょう症では、「低骨密度+骨質劣化型」の人については、骨密度も骨質も両方とも治療で簡単にリスクを下げることができます。治療できることを知り、治療を受けてほしいと思っています。 骨粗しょう症の中でも、私の大学の専門外来で診ているのは「難治性」の骨粗しょう症です。 「難治性」とは、骨粗しょう症治療を継続的に1年以上行っても、新たに背骨や大腿骨の骨折を起こしてしまった患者さんです。「難治性原発性骨粗しょう症」「続発性骨粗しょう症」「骨軟化症」「骨パジェット病」などの専門性の高い疾患が対象となります。 〈難治性の原発性骨粗しょう症〉 原発性骨粗しょう症は一般的な骨粗しょう症のことで、女性ホルモンの減少にともなって起きる閉経後骨粗しょう症や日々の生活習慣(食生活、運動不足、喫煙や多量の飲酒等)によって発症する骨粗しょう症も原発性骨粗しょう症に含まれ、そのうち特に重症なものを「難治性」と呼んでいます。