石破新内閣は「令和のブラックマンデー」に何を学ぶか?
今の日本市場では「恐慌」は起こらない
阿部:バブルのときの「売り」というのは、当時の日本のマクロ経済、とくに銀行業界が抱えていた構造的な問題が露わになった結果とも言えます。 藤吉:どういうことでしょうか。 阿部:つまり当時の銀行はみんな土地を担保にしてお金を借りて、株を買っていたんですよ。けれど、これは土地の値段は半永久的に上がり続けるという前提──つまり「土地神話」ですね──があって成り立つ話であって、実際にはそんな前提はありえない。それがバブル崩壊でした。 ですからバブル当時は金融機関がみんな短期トレードで利益を捻出するために大量の株のポジションを持っていたんですが、今はほとんど持ってません。だから先物とかキャリートレードのような感情的に売りたい人が売り終わると、もう売られるモノがないから、暴落は限定的になるという理屈です。 藤吉:構造的に今の日本市場では、基本的に恐慌は起こらないということですか。 阿部:そう考えていいと思います。日本経済全体がかつてほど株に依存してないから。 藤吉:ただ、今回のブラックマンデーは、新NISAなどを始めたばかりという投資初心者の人たちにとっては、ショッキングな事態だったのかな、とも思うんです。 阿部:それはあったでしょうね。でもそこで感情的に反応せずに我慢して持ち続けた人たちは、その後、大分戻したので損害はかなり抑えられたはずです。これから株である程度の資産を持つうえでは必要な“レッスン”だったんじゃないですかね。 やっぱり市場というのは上がるときも、下がるときもある。当たり前のことなんですけど、今の若い人たちって意外と「下がる」経験がなかったんですよね。とくにアメリカの株なんかは、この30年、毎年9%ぐらいずつ上がり続けていましたからね。これは過去のデータからすると異常な上昇率なんですよ。 藤吉:普通はどれくらいなんですか? 阿部:過去100年の平均でいえば、年間6.7%の上昇ぐらいが“巡行スピード”ですね。だから今はちょっと高いんです。 藤吉:では、いずれ“巡行スピード”に戻る? 阿部:そうですね。ただアメリカの市場のオーソリティーは、もうそこまで織り込んでいると思います。それだけ市場に対するときの知恵があるし、コントロールする手腕も熟練している。そこは日本とは違いますね。