石破新内閣は「令和のブラックマンデー」に何を学ぶか?
何も発信しなかった日本のオーソリティー
阿部:僕が今回の「ブラックマンデー」で一番気になったのは、日本の市場におけるオーソリティが何も発信しなかったことなんです。日銀総裁も総理大臣も株価が史上最大の下げ幅を記録したことについて直接言及しませんでしたよね。けれど世界ナンバー3の国の市場で一時的にでも機能が停止して値段がつかなかったというのは、国の信用に関わる大問題です。本来は何か言わなきゃいけない局面なはずです。 藤吉:そうですね。 阿部:あえて言葉を選ばずに言えば、海外の投資家や投機家から日本はなめられているんです。円安対応にしても日銀が為替介入で何とかけん制していますが、そもそも為替介入しなきゃいけないほど円を売られる状況を作ってしまっているのが問題なわけだから。 藤吉:投資家から「どうせ日本は何もできない」と足元を見られている。 阿部:欧米の国なら、これだけの暴落があれば、しかるべき立場の人が絶対に何かメッセージを出すはずです。だって資本主義国家のベースは市場、つまり「神の見えざる手」が働く場所であって、そこが揺らぐのは、国が揺らぐのと一緒なわけですから。 藤吉:市場が絶対的な権威なわけですね。 阿部:そう。そう考えると日本では、市場が最上位の権威では明らかにないですよね。じゃあ何が日本における最上位の権威なのかという答は私には分かりませんが、「神の見えざる手」が最上位の権威であるとのアダム・スミスの言葉は腹落ちしていないですね。 藤吉:確かに日本の政治家でこういう局面でしっかりとアナウンスした人ってあまり記憶にないですね。やっぱり市場で回っている国ではないということでしょうか。 阿部:市場とは別の権威があるというかね。市場に対してどこか他人事みたいなところがあるかもしれない。政治家が株で儲けたとか損したとか、やっぱりそういう話はできないですからね。でも政治家じゃなくても、日銀総裁でもいいわけですよ。日本経済の基盤を揺るがしかねない危機だったんだから、それに対して反応できるインテリジェンスを持った人がいなかったというのは、実は深刻じゃないかな、と思います。