【瀧本誠氏の解説】阿部一二三選手、前に出て攻めに徹した 阿部詩選手、組み際の技ばかりで…
「パリ五輪・柔道男子66キロ級&女子52キロ級」(28日、シャンドマルス・アリーナ) 【写真】号泣のち歓喜の涙 詩、突っ伏して泣き崩れる 男子66キロ級の阿部一二三(26)=パーク24=が、危なげない戦いぶりで東京大会に続く連覇を決めた。日本男子の2連覇は大野将平以来で5人目の快挙となった。また、妹の阿部詩(24)=パーク24=は女子52キロ級2回戦でケルディヨロワ(ウズベキスタン)に一本負けを喫して敗退、2連覇はならなかった。シドニー五輪男子柔道81キロ級金メダリストの瀧本誠氏が2人の柔道を解説した。 ◇ ◇ 阿部一二三選手は最初は硬さがみられた感じだったが、準々決勝を勝ったあとは乗ってきて、体もどんどん動くようになった。前に出て攻めに徹していたし、いつもと違うなと感じた。先に攻めているから調子も上がってきて、決勝は前に出ていたので安心して見ていられた。この階級は正直、外国人選手にあまり強い選手がいない。準々決勝と準決勝の相手がちょっと手ごわかったが、それでも阿部選手が一枚も二枚も上だった。 4年後でもまだ30歳。問題なくいけると思う。ただ、体力は落ちる一方なので技術でカバーしていくしかない。気になるのは右手で吊り手を持たないこと。ほとんど両袖を持つこと多い。これだと足技が出ないし、この日も左からの技は全然なかった。吊り手をきちんと持つようになれば技の幅が広がるし、まだ伸びしろもあると思う。 阿部詩選手にも同様のことが言える。吊り手をほとんど取らず、引き手を持って組み際の技ばかり。2回戦で先に技ありを取った内股も、吊り手を持っていないので効いていなかった。しっかり吊り手を持っていれば一本になっていたと思うし、逆転の谷落としを食うこともなかったはず。 スピードがあるし、体全体のバネもいい。身体能力はすごく高い。ただ、それだけでは勝てない。世界中の相手が研究してくるし、もう少し柔道の幅を広げていかないと。今後はそのあたりを考えてほしい。 ここまでの柔道競技を見ていると、ジャッジの不安定さがあって判定が甘いような感じがする。これから後半に入って重い階級になれば、日本選手には不利になってくることもあるのではと少し心配している。