青色バナナには整腸作用が? 医師が教える「腸内環境が整う」16の習慣
心身の健康、免疫機能のアップ、ダイエット、アンチエイジング......すべては腸から始まります。日本消化器病学会専門医の工藤あきさん、工藤内科院長の工藤孝文さんに、腸を整える16の習慣を教えていただきました。(取材・文:加曽利智子、イラストレーション:宮原あきこ) 自律神経が整う「腕のばし&背中ストレッチ」の簡単なやり方 ※本稿は、月刊誌『PHP』2024年6月号より、一部編集・抜粋したものです。
腸は第二の脳
腸はさまざまな臓器と連携し、栄養を消化吸収して不要なものを排泄しています。また、免疫細胞の約7割が腸に集中していて、免疫機能においても重要な役割を果たしています。 さらに、腸は「第二の脳」と言われます。「緊張するとおなかが痛くなる」ことがあるように、脳と腸には、互いに影響し合う深いつながりがあります。心身ともに健康な生活を送るには、腸を整えることが必須です。
腸内細菌は「多様性」の時代へ
腸を整える=腸活のカギを握るのが腸内細菌。「善玉菌、悪玉菌」ということが言われてきましたが、最新の腸活では腸内細菌の多様性を重視しています。研究が進み、これまであまり意味がないと思われていた細菌のいろんな作用が明らかになったからです。 腸内環境は3歳ごろまでに形成され、それ以降も食事や習慣によって日々変化します。腸活で多様な菌を取り入れましょう。 【腸の基礎知識】 ・「小腸」と「大腸」がある 腸は大きく小腸と大腸の2つに分けられます。食事からとった栄養のほとんどが、小腸で吸収されます。 ・100兆個以上の腸内細菌が棲む 大腸には約1000種類以上、100兆個以上の腸内細菌がいます。免疫機能を高める、ビタミンなどの合成、発がん性物質の抑制など、健康を維持するための役割を担っています。
食べもので腸を整える!
口から入ってくる食事は腸活の基礎となります。食材選びや食べ方を工夫して、健康な腸を手に入れましょう。 【腸活1】ビタミンC、B2、B6で有用な菌を増やす ビタミンC、B2、B6には人間に有用な腸内細菌を増やす作用があります。腸内で増えた有用な菌(乳酸菌など)がビタミンを作ってくれるという相乗効果も。いずれも水に溶けやすい水溶性ビタミンのため、食材を長時間ゆでたり水にさらしたりすると、ビタミンが流出してしまうので要注意です。 【腸活2】脂肪控えめで食物繊維が豊富な植物性たんぱく質に注目 たんぱく質には、腸内細菌のエサとなる食物繊維が豊富に含ふくまれています。ただし、肉や乳製品などの動物性たんぱく質は消化に負担がかかるため、とりすぎには注意。未消化のまま腸に進むと腐敗し、腸内環境が悪化します。脂肪控えめの植物性たんぱく質を優先的に。 【腸活3】根菜類でたっぷりと不溶性食物繊維をとる 根菜類に含まれる不溶性食物繊維は、便の量を増やして腸を刺激し、ぜん動運動をうながしてお通じを整えます。腸内の老廃物を吸着して排泄する働きもあり、腸内環境をよい状態に保つためには欠かせません。ごぼう、いも類、にんじんなどを積極的にとりましょう。 【腸活4】ヌルヌルの海藻類で水溶性食物繊維をとる わかめ、昆こん布ぶ、もずく、めかぶなどの海藻類の特徴であるヌルヌル、ネバネバの正体は水溶性食物繊維です。水分を吸収するとゼリー状になって、まるでぬれた布巾で腸内をふき取るように、体に不要な老廃物を除去。便をやわらかくして排便をうながします。 【腸活5】納豆で腸内細菌の力を引き出す 蒸した大豆を納豆菌によって発酵させた納豆は、腸活に不可欠な一品。実は、腸内細菌のエサとなる食物繊維は、人間の消化酵素では分解できません。納豆菌は食物繊維を糖に変換し、腸内の菌が食べやすい形にします。特にひきわり納豆は表面積が多い分、付着する納豆菌も多いと言われています。 【腸活6】整腸には青色バナナがおすすめ バナナには食物繊維や難消化性のフラクトオリゴ糖が含まれるため、便通の改善が期待できます。特に青色バナナには食物繊維と同じような働きをする難消化性でんぷんが多く含まれているので、整腸作用のほか、血糖値の急上昇を抑制し、満腹感を持続させて食べすぎを防ぐ効果もあります。 ・青色バナナ...難消化性でんぷん豊富、整腸作用=便秘解消 ・黄色バナナ...ビタミン豊富、抗酸化作用=アンチエイジング、美肌 \最強の食事を目指すなら「1975年の食事」をお手本に!/ 腸内環境の乱れの要因の一つに、食事の欧米化があります。日本食に比べて肉類や乳製品など、動物性たんぱく質の摂取量が増え、食物繊維の摂取量が不足していることが影響していると考えられます。そこでお手本にしたいのが、一汁三菜で栄養バランスがよい、1975年ごろの日本の食事です。東北大学の研究で、腸内細菌にもメタボ対策にも有効であることがわかりました。 【腸活7】薄味で素材そのものを味わう 塩は人間が生きていくために必要ですが、とりすぎると腸内環境に問題が生じます。塩が有用な菌である乳酸菌と結合すると、腸内細菌のバランスに乱れが生じ、炎症反応を起こすのです。減塩には血圧を下げ、太りすぎを防ぐ効果も。薄味で素材そのものを味わう習慣をつけましょう。香辛料やレモン汁、うまみ成分が豊富な出汁などを上手に使うと、塩を減らしやすくなります。 【腸活8】砂糖の代わりにオリゴ糖を活用する 砂糖は腸内でいい働きをする特定の菌が腸に定着するのを邪魔することが、実験でわかっています。砂糖の代わりの甘味料としておすすめなのが、難消化性の糖であるオリゴ糖です。消化されずに腸に届いて、有用な菌のエサになり、腸のぜん動運動をうながしておなかの調子を整えます。 【腸活9】故郷で作られた発酵食品を選ぶ みそ、納豆、漬物などの発酵食品は、腸内の有用な菌を活性化してくれます。特に故郷で作られた発酵食品は強い腸活効果が期待できます。腸内細菌の分布は3歳までに決まるため、自分や親の生まれ育った土地で作られた発酵食品には、自分の体に合った腸内細菌が含まれている可能性が高いからです。 【腸活10】泥つき野菜、丸ごと果物で腸内細菌の多様性を守る カット野菜や果物の加工品は便利ですが、殺菌処理されているため、泥つき野菜や丸ごとの果物のほうが腸内細菌を多様にします。たとえば、みかんを自分でむいて食べれば、付着していたいろいろな菌が体に入ってきますが、加工されたみかんジュースには、ほぼ菌は含まれていません。 【腸活11】毎朝卵かけごはんで小腸を健康に保つ 小腸には体内の約6割の免疫細胞が存在しています。卵に豊富に含まれているグルタミンは、小腸の腸壁をしなやかに保ち、免疫細胞を育てます。グルタミンは40℃以上の熱や酢で変性してしまうので、生で食べるのがベスト。卵かけごはんや月見そばなど、1日1個の生卵で免疫機能をアップさせましょう。 【腸活12】乳酸菌と食物繊維を同時にとる 有用な菌と、その菌のエサを同時にとることで、腸によりよい効果が期待できる「シンバイオティクス」。簡単で朝食にも最適なのが、無糖ヨーグルトに食物繊維を含むおからパウダーを混ぜたおからヨーグルトです。みそ汁に海藻類を入れた海藻入りみそ汁もぜひ定番に。 \自分の腸内環境に合ったヨーグルトの見つけ方/ ヨーグルトを毎日食べているのにお通じがよくならないなど、効果が実感できないときは、そのヨーグルトに入っている菌が、自分の腸内環境には合っていない可能性があります。自分に合ったヨーグルトを見つけるには、同じ製品を2~3週間食べ続けて、よい変化があるかをチェック。特に変化がなければ別のものを食べてみましょう。腸活のベストパートナーを探すつもりで、いろいろ試してみてください。